近年、大人気の香りつき柔軟剤。男女ともに香りを楽しむ人が増加している中、柔軟剤の香りブームは、こんな“被害者”も生んでいる。

 都内の会社で働くA子さん(33)は、1年ほど前から隣席に座る40代の女性が漂わせる柔軟剤の香りに悩まされるようになった。その香りがA子さんにとっては苦手なのだが、デスクワークのために逃げ場がない。常に漂う香りのため仕事に集中できなくなり、席でコーヒーも飲めなくなったという。A子さんは、

「本人に悪気はなく、私以外の人は気にしていないようなので、相談することもできません」

 と嘆き、ただブームが去ることを願っているという。

 筑波大学人間系准教授で嗅覚心理学が専門の綾部早穂さんはこう話す。

「においの感じ方は、個人差が大きい。たとえば百合の花の香りのように、多くの人がいいにおいと感じるようなものでも、お葬式を連想するから嫌だと感じる人もいる。昔ひどく振られた相手がつけていた香水のにおいにはいい印象を持てない、というケースもあります。スポーツをする高校生の汗くささが耐えられないという人がいる一方で、本人たちはそれほどくさいと感じていないでしょう。生活環境や経験などによって、においをどう感じるかは違ってくるのです」

「強さ」「長さ」を競う柔軟剤の香りブームも、周囲への気配りがあってこそ、本当にかぐわしいものになるのだろう。

週刊朝日 2013年3月15日号