福島第一原発周辺の市町村ではコメの作付け禁止や自粛が続く (c)朝日新聞社 @@写禁
福島第一原発周辺の市町村ではコメの作付け禁止や自粛が続く (c)朝日新聞社 @@写禁

 東日本を襲った大震災から2年。ジャーナリストの辛坊治郎氏は、福島第一原子力発電所の近郊自治体の中で、いち早く町の中心部の除染を済ませて役場機能を復活させた基礎自治体のトップに話を聞いた。そこで震災復興の意外な難点があったという。

*  *  *

 科学的見地から見ても、福島第一原発の北西方向以外の汚染はさほどひどいものではなく、除染の終わった住宅地の多くで、十分日常生活が送れる放射線レベルになっていることは否定しない。しかし一消費者としては、その範囲内の農地で作られた食べ物を、現時点で好んで食べるかと問われれば、正直あまり気が進まないのも事実だ。現実に多くの農地の除染は進んでおらず、耕作が許可される見通しも立っていない。

 かくして震災から2年、原発周辺の農地は、耕作のめどが立たないまま放置され、一面の雑草地に変わってしまっている。このまま数年を経れば、草の間から木が芽吹き始め、やがて耕作地は元の森林へと還ってゆくだろう。

 件(くだん)の首長も、市街地に人が戻ってくることができても、耕地が豊かに作物を生み出し、それが消費者に受け入れられる日が近々やってくるとは思っていないようだ。そのため彼は、休耕地を使った大規模太陽光発電施設の誘致に乗り出した。今年度末までに認定を受ければ1キロワット時あたり42円で買い取ってもらえる制度が追い風になり、すぐに出資を申し出る企業が現れ、休耕地の転用が認められれば即建設というところまでこぎつけた。これが実現すれば、町を離れて避難住宅に暮らす土地所有者にとっても、税収不足の町にとっても、農地は金の卵を産む鶏に変わる。また、電力不足に悩む地域産業や、膨れ上がる化石燃料の輸入代金に苦しむ日本経済にも朗報だろう。

 ところが農林水産省は、この計画にまたもノーを突きつけたそうだ。

週刊朝日 2013年3月1日号