体罰を苦に生徒が自殺した大阪市立桜宮高校の問題をめぐり、橋下徹大阪市長は体育2科の入試中止を求めた。入試中止には、賛否が分かれたが反対派の意見に作家の室井佑月氏は「よくわからない理屈」だと言及した。

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 今の教育現場の閉鎖的な感じは、もう誰もが知っていることだ。全国のいじめは不幸にも自殺する子が出てこない限りは黙認されているし、桜宮高校にいたっては何度も教師による体罰が告発され、それを学校と教育委員会が放置してきた事実がある。

 朝日新聞の社説には、橋下さんの「実態の解明もできていない段階で新入生は受け入れられない。入試を中止しないなら市長権限で予算をとめる」という発言に対し、「受験予定の中学生たちに、何の落ち度もないのに進路の変更を強いるのだろうか。子どものことを第一に考えよう。橋下氏は要請をやめるべきだ。(中略)亡くなった生徒の命の重みを考えるなら、学校を再生する道をとるのが先ではないか」と書かれていた。

 あたしにはよくわからない理屈だな。子供のことを第一に考えるなら、ちょこっと学校を手直しして……なんて問題じゃないだろう。在校生にとっても、この学校に入りたかった子供に対しても。そして、亡くなった生徒の命の重みを考えるなら、もっとだ。

 テレビのマイクを向けられて、この学校の生徒が、「私たちはなんにも関係ないのに」といっていた。同じ学校の子が亡くなったのに。この子も被害者なのだと思った。

週刊朝日 2013年2月8日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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