写真家・石川直樹 辺境の地で自身を支える一冊のファイル 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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写真家・石川直樹 辺境の地で自身を支える一冊のファイル

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週刊朝日

 2000年に北極点から南極点までを人力踏破。01年、7大陸最高峰登頂を達成。旅、自然をテーマに作品を発表し続けている写真家の石川直樹さんが「旅の道連れ」として必携するのは一冊のファイルだという。

*  *  *
 このファイルを旅先に持っていくようになったのは、だいたい3~4年前からですかね。それまでは、透明で薄い、どこにでもあるようなファイルを持っていったんですが、中身がすぐ飛び出してしまうし、ヤワなので、頑丈で性能がいいファイルをずっと探していました。これは手帳で有名なモレスキンのものです。敬愛する紀行作家、ブルース・チャトウィンが、モレスキン製のノートに日記をつけていた。それで最初はノートを買ったんですが、ファイルも使いだしたら、しっくりなじんできまして。これを持っていると、「よし、旅をするぞ」って気分にもなるので、気に入ってます。ファイルには、パンフレット、地図、領収書、なんでも入れます。

 このファイルを見ると、旅先でも日常を思い出す。外見というかたたずまいが、とても都会的で、町の香りがするから。

 僕の旅先の多くは、辺境の地。大自然の中、自分の体と五感だけが頼りの場所も多い。テントの中には登山道具などを入れますが、必要最低限のものばかりです。でも、このファイルがテントの一番奥にぽつんとあるのを、ふと見たりすると、その瞬間、町を思い出すんですね。ああ、自分はいま、ひとりで山奥にいるけど、本当は仕事があり、都会での暮らしがあり、家族がいるんだ、っていうことを。その感じがいい。

週刊朝日 2012年12月28日号


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