野田首相の演説を聞く聴衆。この3年余りの民主党政治への評価が問われる=11月25日、大阪府茨木市 (c)朝日新聞社 @@写禁
野田首相の演説を聞く聴衆。この3年余りの民主党政治への評価が問われる=11月25日、大阪府茨木市 (c)朝日新聞社 @@写禁

 イタリアは著名な経済学者であるマリオ・モンティ氏を首相に、閣僚すべてを選挙とは無縁の民間から任命。異例の政権による大胆な政策で当面の財政危機を乗り越えることに成功した。ニュースキャスターの辛坊治郎氏は、選挙を経ずに誕生したイタリアの現政権と、間もなく選挙を迎える日本を比較し、その皮肉な現状を指摘する。

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 日本では、憲法上、総理と過半数の大臣は国会議員でなくてはならないと定められているので、同様のケースは起こり得ないのだが、イタリア政府がこの1年、国民や既存の政治権力にこれほど不人気な政策を、これでもかと積み重ねることができたのは、選挙で落ちる心配をしなくて済む面々が政策を立案し遂行したからなのだ。

 選挙の洗礼を受けて民主的に選ばれた政府が目先の人気取りに走って国を誤らせ、民主主義のプロセスに影響されない政権が、民主的に選ばれていないからこそ国を救える。これほど皮肉な話はない。

 翻って日本の現状はどうか。衆議院が解散され、文字通り「近いうち」に、政治家たちが民主主義最大の祭りである選挙の洗礼を受ける。

「デモクラシー」すなわち「人民の力」は、この国を正しい軌道に乗せることができるのか。試されているのは我々である。

(週刊朝日2012年12月14日号「甘辛ジャーナル」からの抜粋)

週刊朝日 2012年12月14日号