特許庁による公金54億円をつぎ込んだ新システムの開発が中断している。突然の中断を発表したのは、今年1月24日。枝野幸男・経済産業相は「大変申し訳なく思う」と謝罪した。だが、事は大臣の謝罪で済まされる問題ではない。化学大手「日油」の早崎泰・知的財産部長はこう話す。

「企業は世界中の特許情報を100も200も調べて製品開発をしている。だから、新特許システムには非常に期待していた。しかし、その開発が止まったとなれば、企業の力も、国力も弱っていってしまう」

 産業界の期待を背負った新特許システム事業は、2006年12月に開発が始まった。システム設計を落札したのは、東芝の100%子会社「東芝ソリューション」(以下、TSOL)。開発管理はコンサル会社「アクセンチュア」が担った。

 順調に進めば、昨年1月にシステムは稼働するはずだった。ところが、TSOLは08年にまず1回目の延期、翌09年に2回目の延期を特許庁に申し入れた。最終的に、「2017年1月まで完成がずれ込む」とTSOLが申し入れた段階で、特許庁は「TSOLがシステムの設計構造を理解していなかった」として、開発を中断した。

 新システム構築事業は何も進んでいない。だが、TSOLに約24億円、アクセンチュアに約30億円がすでに支払われている。つまり、約54億円の公金がドブに捨てられているのだ。

週刊朝日 2012年10月19日号