5月22日に開業し、人気を博している東京スカイツリー。しかし、日本が誇る"世界一"はこれだけではない。今年3月、山形県鶴岡市の加茂水族館もクラゲの展示種類数でギネスブックに登録された。

「ギネスブックには館長歴45年を登録しようと思ったんだけど、却下されてね(笑い)。で、クラゲ展示種類数世界一を申請しました」

 館長の村上龍男さん(72)はそう言って笑う。実際には2005年からすでに世界一だ。

「1997年は入館者が9万人まで減り、倒産寸前でした。今年限りだな、という心づもりで珊瑚(さんご)の展示をしたら、そこにクラゲの卵がついていたんです。突然、小さな生物が数十匹泳ぎだした。スタッフが餌をやったら、それがクラゲだったんです。お客さんもえらく喜んで。『これだ!』と思い、その辺でクラゲをたくさん捕まえて、展示し始めたんです」(同)

 しかし、当時はスタッフの誰一人、クラゲの生態を知らなかった。魚用の水槽に入れて飼っていたが、2週間ほどで死んでしまう。なぜかわからない。2年たってやっと、水流を作れる水槽が必要だとわかった。が、お金がない。飼育員が自ら水槽を作った。3年日には繁殖を始めたものの、卵を見るための"実体顕微鏡"がない。すべてが試行錯誤の繰り返しだった。

「それでも、4年目にはクラゲで日本一を目指すと決めたんです。当時、神奈川県の水族館がクラゲを11種類展示していたので、こっちは水槽を12個並べて。姑息なのよ、やることが(笑い)。どうしようもない水族館でも日本一になれると思いたかったんだ」(同)

※週刊朝日 2012年6月8日号