これまで講演会や著書などで原発の即時全廃を訴えてきた作家・広瀬隆氏。そんな広瀬氏が、本誌連載の最終回で脱原発を達成したドイツの例を提示し、日本の電力会社に苦言を呈した。

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 ドイツの2大電力会社フェーバとRWEの社長が、原発撤退政策を当時のコール首相に提出したのは、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故から6年後の1992年10月のことであった。原子力に没頭してきた電力会社でありながら、彼らは自らの手で大事故を起こす前に、原子力が危険であると判断する知性を持っていた。なぜ日本の電力会社には、いまだにその知性が育たないのかね。

 日本の電力会社もまた、これからは安全な電気を生み出す部門だけに縮小されるのだ。本来あるべき姿に戻るのだ。今まではしゃいでいた分、君たちが夢をはかなむ気持が、私たちに分らないわけではない。しかし日本社会にこれだけの甚大な被害を与えたのだ。まだそれをほとんど償っていない自分の罪と、とっくり話し合ってみるがよい。改悟(かいご)の情は、いさぎよいほうがよい。そうすれば、私たちも、過去の確執を乗り越えて、あなたたちをあたたかく社会に迎えてあげよう。

 その言葉を早く聞かせてくれたまえ。それをこの耳で聞くまで、私たちは一歩も退かない! (読者と共に……)

※週刊朝日 2012年3月30日号