半導体大手「エルピーダメモリ」の増資などを巡るインサイダー取引事件で、経済産業省元審議官の木村雅昭容疑者(53)が2月1日、金融商品取引法違反(インサイダー取引)の罪で起訴された。

 経産省にとっては信用を揺るがす一大事だが、同省職員からは、「むしろ当人にとっては『起訴されてよかった』と安堵するような待遇になっている」という皮肉も聞こえる。これはどういうことなのか。

 木村被告を知る職員の一人は言う。「過去の例を見ても、公務員が逮捕されるとだいたい年休があるうちに起訴されます。起訴前は年休を消化し、起訴後は"起訴休職扱い"で、給与の60%が支払われ、生活に困ることがないんですね」

 かねて経産省の内部調査を受けていた木村被告は、1月12日に逮捕された。逮捕から起訴までは20日間。国家公務員の年次休暇は毎年1月1日に付与されるため、今年の有給休暇(20日間)をきっちり消化したことになる。

 さらに、起訴休職で支払われる給与は、国家公務員はどんな場合でも一律で受け取ることができる上、「範囲内でどれだけ払うかは大臣の判断」(人事院)だという。

 木村被告は情報通信関連の企業内部情報を知りうる立場にありながら、「妻の指示だった」と主張するが、「服務規程違反で懲戒処分にできるのは、本人が全面的に認めている場合。それまでは、期間の定めもないので給与が支払われる。判決で禁錮刑以上なら免職ですが、罰金刑までなら復職も可能」(経産省人事課)。

 まさに後顧の憂いなき、完璧な身分保障だった。

※週刊朝日 2012年2月17日号