日本で生活する人にとっては、ほとんど無縁ともいえるpoux(プー)。じつはこれ、フランス語でシラミのことなんです。秋になるとフランスでは風物詩かのごとく、幼稚園や小学校で大流行します。1匹見つけると大変!シラミの恐怖とその対策法をお伝えします。

なぜフランスでシラミが流行するの?

「フランスではシラミが流行る」と聞いたとき、戦時中の話では?と耳を疑いました。そうは言っても、よほど不衛生にしていなければ大丈夫だろう、と他人事のように思っていました。
ところが、フランスに来て初めての秋、早速子供が通う幼稚園から「Les poux sont arrivés.(シラミがやってきた)」との注意喚起が。
フランスに長年住んでいる日本人の知人に聞いてみたところ「うちの子ももらってきたことがあるよ」と言われて驚きました。別の知人からも同じことを聞いて、我が子もシラミの脅威にさらされていることを知り、愕然としました。
どうやら“シラミ=不衛生“というわけではないようです。シラミは髪の毛を伝って移動するので、どんなに清潔にしていても寄生する可能性があります。そのため、身体や頭を寄せ合って遊ぶことの多い、幼い子供たちの間で流行るんですね。
フランスの子供にシラミが多い原因はいくつか考えられます。
まずは接触の回数。フランスにはビズ(la bise)という頬と頬を寄せ合ってする挨拶の習慣があるように、子供たちも顔を寄せ合ったり、ハグしたりするのが大好き。日本人と比べると、密に触れ合う機会がとても多いのです。
次に髪型や髪質。女子は多くがロングヘアで、くるくるのカーリーヘアの子もたくさんいます。髪の毛は細くて柔らかく、シラミがつきやすくて取れにくい髪質のようです。
最後は習慣。フランス人が髪の毛を洗うのは数日に一回だそうで、頭にいるシラミを見つける機会や、洗い流すチャンスが少ないとも言えます。また、駆除にはとても手間がかかり大変。日本人のようにマメで几帳面な人が少ないことも原因の一つでしょう。

そして写真のとおり、再び教室の入口に「Les poux sont de retour(シラミが帰ってきた)」と書かれたポスターが…
フランスからシラミがいなくなる日は、なかなかやってきそうにありません。

シラミを見つけたときの対策法

先日、私の友人も子供の頭に動く虫を見つけたと嘆いていました。
見つけるポイントは、頭をよく掻くようになること。特に耳の後ろやうなじのあたりに付くことが多いようなので、その辺りを念入りにチェックします。
動く虫がいなくても、卵が付いている可能性もあります。卵は白くて、髪にしっかりと付いています。フケと違って、手ではらっても取れないので分かりやすいそうです。

薬局に行くと、シラミ対策用グッズのコーナーがあり、商品がずらりと並びます。私も購入したシャンプーの使い方はこちらです。
(1)ジェルを濡れた髪につけ、頭皮をマッサージし、15分間放置します。
(2)髪をすすぎ、付属のくしを湿った髪に通して、シラミを取り除きます。
(3)必要に応じて、5日間隔で2~3回、同じことを繰り返します。
シラミの卵はシャンプーをしただけでは死なないので、くしを通す時によくチェックして一つ一つ丁寧に取り除くことが大切。家族のうち1人だけにシラミを見つけた場合も、感染の可能性があるので、家族全員が一斉にこのシャンプーを使う必要があります。
でも、シラミ駆除はこれだけでは終わりません。シラミがいるかもしれない衣服や帽子、枕カバーやシーツなどを、60°以上のお湯で洗濯します。
洗えないものはゴミ袋などに入れて密閉し、3日ほど放置すれば窒息して死ぬそうです。
シャンプー、寝具一掃、毎日頭をチェック…目が回りそうです。これは根気が必要ですね。

シラミを寄せ付けないための予防法

シラミはラベンダーの香りが嫌いだそうで、ラベンダーオイルを含んだ予防用スプレーが薬局で売られています。使い方はとても簡単で、朝出かける前にこのスプレーを髪に振りかければOK。特にシラミが付きやすい耳の後ろやうなじの辺りは念入りに振りかけます。
また、ラベンダーオイルを数滴シャンプーに混ぜてから髪を洗うのも効果的だとか。
我が家では、学校から警告があった時には、頭をよくチェックし、シラミが見つからなくてもその日はシラミ対策用シャンプーで洗います。その後しばらくは、毎朝学校へ行く前に予防用スプレーを振りかけています。予防法はいたって簡単なので、シラミが流行する季節は面倒がらずに続けたいですね。

頻度は少ないですが、現代の日本でも度々集団発生することがあるそうです。
シラミを一匹でも見つけてしまうと本当に大変!やるべきことの多さと、ほかの家族に移るかもしれないという恐怖で、ダメージが大きいです。
いつか我が子ももらってくるんじゃないかとヒヤヒヤしていますが、心強いアイテムがたくさん揃っています。あまり神経質になりすぎず「プーよ。いつでも来い!」と、どんと構えていたいものですね。