風を祭る、二百十日とは何の日?ー俳句歳時記を楽しむ

2017/08/30 11:00

いよいよ夏休みシーズンも終わりを告げ、まもなく九月となります。立春から数えて210日目にあたるのが雑節でいう二百十日(にひゃくとおか)で、今年は9月1日です。この日から10日後の二百二十日(にひゃくはつか)にかけては季節の変わり目となり、暴風雨や台風が警戒されてきました。稲の開花期にあたり、昔から農家では厄日として恐れられ、心構えが必要とされたのです。二百十日、二百二十日、厄日はいずれも仲秋の季語。いくつかの俳句を追ってみます。

ひらひらと猫が乳呑む厄日かな 心地良い秋らしい天候が待ち遠しい中ですが、台風や集中豪雨への警戒は欠かせません。気候変動の差はあるとはいえ、いつの時代も人々は、秋の収穫を前に注意深く空を見上げていたことでしょう。ご紹介する俳句からは、秋の空気感を楽しみつつ、小さな天候の変化に敏感になったり、無事に過ぎた二百十日にほっと一息つく様子が伝わります。 ・菜大根に二百十日の残暑かな     李由 ・荒れもせで二百十日のお百姓    高浜虚子 ・風少し鳴らして二百十日かな      尾崎紅葉 ・十日過ぎ二百二十日の萩の花     横山蜃楼 ・小百姓のあはれ灯して厄日かな    村上鬼城 ・ひらひらと猫が乳呑む厄日かな    秋元不死男 ・空ふかく二百十日の鳥礫(とりつぶて)     青木泰夫 ・大厄日西広々と暮れにけり           松村浪山 ・火の国の厄日過ぎたる陸稲(をかぼ)の香    大島民郎
越中八尾 おわら風の盆
越中八尾 おわら風の盆
越中八尾二百十日の月上げし そしてこの二百十日の頃の台風の時期に,風害をしずめ豊作を祈る祭りが各地で行われます。有名な富山県八尾町の「風の盆」は、二百十日の風祭りと盂蘭盆で祖霊をまつる行事が習合されたもの。毎年9月1日〜3日は三味線や胡弓に合わせて、民謡「越中おわら節」の唄と踊りが、町中に溢れます。 ・踊りの手ひらひら進み風の盆    福田蓼汀 ・日ぐれ待つ青き山河よ風の盆    大野林太 ・山垣の上の金星風の盆        上村占魚 ・胡弓の音杉間に消ゆる風の盆     畠山譲二 ・越中八尾二百十日の月上げし     渡辺恭子 俳句には、自然への畏怖と敬意、そして人々の営みへのあたたかき眼差しが込められています。続く秋が、どうか穏やかに、そして実り多きものとなりますように。 <句の引用と参考文献> 『カラー図説 日本大歳時記 秋』 (講談社) 『第三版 俳句歳時記〈秋の部〉』 (角川書店) 『日本大百科全書(ニッポニカ)』 (小学館)

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