【ニッポン洋食ものがたり】コンソメスープやコーンスープ、その秘められた由来

2016/10/19 18:30

各地でそろそろ、温かい「スープ」が恋しくなる季節を迎えますね。 コース料理を注文したレストランで、ちょっと気取っていただくスープ。 スーパーの店頭にはインスタントや缶詰のスープがたくさん。 そして、コンビニに行けばお湯を注ぐだけですぐに食べられるカップスープがずらり……。 日本の食生活に馴染んで久しい「スープ」ですが、いったいいつから食べられているのでしょうか? 「ニッポン洋食ものがたり」、今回はスープの歴史を紐解きます。

日本発祥?の説もあるほど親しまれている「コーンスープ」
日本発祥?の説もあるほど親しまれている「コーンスープ」
肉食の習慣がなかった日本で、スープはどう受け入れられた? 日本に初めてスープをもたらしたのはいつ、誰だったのでしょう? 真実ははっきりしませんが、おそらくオランダ人だったのではないかと考えられます。 オランダ語の「soep」が語源と言われる、日本語の「スープ」。 洋食が食べられるようになった明治の初期には、「ソップ」と発音されていたようです。 そういえば、お相撲の世界や古くからの料理屋さんなどで、「ソップ」という言葉が今も使われていますね。 肉食が長く禁忌だった日本。 明治時代になり、肉食が解禁されてからも、人びとの意識はそう簡単には変わりません。 そんな中、スープは病人が栄養をつけるための「滋養食」として受け入れられていきました。 牛肉や鶏肉で作った「ソップ」を発売した記録や、病人食として「牛肉ソップ」を配達した記録などが残っています。 その後、明治時代の後半から大正時代になると、都市部を中心に庶民的な洋食店が登場。 人びとが少しずつ洋風の味に親しんでいったのは、「コロッケ」の回でもご紹介したとおりです。 おそらくその中には、さまざまな味つけの「スープ」も含まれていたのではないでしょうか。 学び、禁じ、また受け入れ……ニッポンの洋食、迷走の歴史 戦前から戦後にかけて活躍した伝説的なコメディアンで俳優の古川ロッパ(緑波)。 1938(昭和13)年に書かれたという「古川ロッパの昭和日記」には、横浜のホテルニューグランドで 「トマトクリームスープに、ミートボール、スパゲティ」を食べたという記載があります。 1938年といえば、すべての人的・物的資源を国の命令で運用できる「国家総動員法」が制定された年。 1940年に予定されていた東京オリンピックの開催の返上を決定した年でもあります。 戦争の道へと突き進む、暗い予感を漂わせた時代。そんな中でも、ホテルではまだ洋食を楽しむことができたのですね。 第二次世界大戦の時代になると、日本国内では外国語の使用、および外国風の文化が厳しく禁じられます。 スープを食べるどころか、スープという言葉を口にするのも難しい時代になったというわけです。 1947年、戦後初めて東京で学校給食が復活した時、出されたメニューは「スープ」でした。 アメリカの慈善団体などから寄付された「鮭缶」で作ったスープは、子どもたちに大好評だったとか。 大急ぎで「西欧化」を進めた明治期、戦争によりそれを禁じた昭和初期。 そして再び、アメリカ文化を受け入れ発展する高度成長期…… 紆余曲折を経て、スープを含む洋風の食事は改めて人びとに受け入れられていったのです。
洋食のセットメニューに付き物(?)のコンソメスープ
洋食のセットメニューに付き物(?)のコンソメスープ
沖縄のステーキ屋さんで出てくる「クリームスープ」 喫茶店や洋食屋さん、老舗のカレー屋さんなどで、食事をオーダーするとまずは出て来るのが「コンソメスープ」。 パセリが浮かんでいたり、タマネギやニンジン、ベーコンなどの具が入っていたり……。 お店それぞれに工夫がされていますが、あのどこか懐かしい味わいは共通している気がします。 あの「コンソメスープ」の起源は果たしていつ、どこにあるのか? 解明してみたいところです。 沖縄のステーキ店や、古くからのドライブインなどで食べられる「クリームスープ」。 具は細かく刻まれているか、煮崩れてほとんど見当たらないことも。 とろりと濃厚な、独特の味わいが魅力のスープです。 アメリカ軍の統治下にあった歴史を持つ沖縄。1950~1960年代のアメリカの食文化が、色濃く残っていると言われます。 そのアメリカでは、20世紀初頭にスープ缶詰が普及したこともあって、食事にスープを添える習慣が一般化。 「チキンヌードルスープ」「ベジタブルスープ」「キャベツ&ベーコンスープ」など、多彩なレシピが考案されました。 こうした「スープ食」文化が伝わり、今なお愛されているということなのでしょうか。
沖縄のクリームスープは、奥深い味わい
沖縄のクリームスープは、奥深い味わい
ほんのり甘い「コーンスープ」は、幸せの味? 「コーン缶」や「コーンクリーム缶」を使ったスープを「よく作る(食べる)」という方も多いと思います。 日本では自動販売機でも売られるほどポピュラーな存在ですが、実はコーンを使ったスープがこれほど食べられているのは日本ぐらいなのだとか。 インフラの整備が進んだ1960年代。スーパーなどで牛乳がリットル単位で買えるようになり、牛乳を使った料理が気軽に作れる環境が整いました。 さらに、テレビの料理番組や、新聞・雑誌などでも「コーンスープ」のレシピが紹介され、家庭料理として普及していったのだといわれます。 「コーン缶」の製造・流通なども、きっと関連しているのでしょうね。 当時は高度成長期、多くの人びとが地方から都会に出て暮らし始めた時代。 異なる地域の出身者が、お互いの味覚に違和感を持つことなく食べられるのが「洋食」だった、という説があります。 家族みんなが親しみやすく、心も身体も温まる……それが「スープ」だったのかもしれません。 スープについて調べているうちに、「シチュー」や「ポタージュ」がいつごろから日本で食べられているのかが気になってきました。 そのお話は、もう少し寒い季節になってからご紹介したいと思います! 参考:阿古真理「昭和の洋食 平成のカフェ飯 家庭料理の80年」 東理夫「アメリカは食べる。アメリカ食文化の謎をめぐる旅」 岡田哲「明治洋食事始め とんかつの誕生」(講談社学術文庫)

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