夏に向かうこころの高揚を詠んだ、初夏・7月の詩歌

2016/06/30 16:30

6月も今日で終わり。2016年も半分が過ぎましたが、重く垂れこめた雲間からすがすがしい陽光が射しこむと、なんだか得した気分になる今日この日頃。 6月20日を過ぎた辺りから九州、近畿、そして関東でも局地的な大雨を観測していますが、季節は着実に梅雨から初夏へと移行しています。 これから、寝苦しい夜も多くなっていくことでしょう。でも、夏の到来に気分が高揚する人も多いはず。 そうした初夏の空気感に満ちた7月の詩歌をご紹介します。

初夏の風物詩・梅酒。この時季に梅酒づくりに挑戦する人も多いですね
初夏の風物詩・梅酒。この時季に梅酒づくりに挑戦する人も多いですね
初夏のこころ、いろいろ…… 俳句などの季節は基本的に旧暦によっていますが、現在の私たちの「夏」はやはり7月からですね。 そこで早速、初夏のこころを詠った、さまざまな歌句をランダムに挙げてみましょう。 〈夏はきぬ相模の海の南風にわが瞳燃ゆわがこころ燃ゆ〉吉井勇 〈青梅に蜜をそそぎて封じおく一事をもつてわが夏はじまる〉安立スハル 〈かんがへて飲みはじめたる一合の二合の酒の夏のゆふぐれ〉若山牧水 〈枕べの百合のにほひのあまり強し花の向きをば変へていねけり〉三ヶ島葭子 〈初夏の雨匂ひつつ去り夕暮の光の裳裾ひとびとを染む〉影山一男 〈はつなつのほとけの眉のあはれなり〉角川春樹 安立スハルの詠う梅酒の仕込みも、初夏の風物詩ですね。 吉井勇が詠う夏に向かう心の高揚、そして影山一男の歌に詠われているような、水を含みながらも光があたりを満たしていくような初夏独特の感覚は、誰にでも経験があるのではないでしょうか。
夏の夕暮れ
夏の夕暮れ
雨と雷、そして虹 梅雨の終わりごろには、時に大雨が降ったりするので要注意です。 近年、局地的な雨を「ゲリラ豪雨」と呼んだりしますが、これは正式な気象用語ではなく、突発的な集中豪雨を指す通称。そのため「ゲリラ豪雨」は今のところ季語の扱いにはなっていないようです。 梅雨の終焉を飾る大雨は、ときに雷を伴います。 雷のことを「いかづち」ともいいますが、これは「厳(いか)つ霊(ち)」で、昔は強烈な霊的な威力があるものと考えられていました。 和歌では雷が稲の実りをもたらすものだと信じて秋の題でした。 雷が鳴るとなんとなくわくわくするのは、この信仰の名残かもしれません。 雷が鳴る様を「はたたく」とも言いますが、これは「はためき(鳴り響く)」という言葉の強調形で、激しい音を立てて雷が鳴ることをいいます。 〈水打つて稲妻待つや門畠〉小林一茶 〈はたた神下りきて屋根の草さわぐ〉山口青邨 〈赤ん坊の蹠(あしうら)あつし雷(らい)の下〉加藤楸邨 〈昇降機しづかに雷(らい)の夜を昇る〉西東三鬼 楸邨句は、柔らかい赤ん坊の足の裏と鋭い雷のイメージのコントラストが読みどころ。 三鬼句はモダンな都会の情景です。
はたたく稲妻
はたたく稲妻
もう少し雷の句を挙げてみましょう。 〈遠雷やはづして光る耳かざり〉木下夕爾 〈雷落ちて青む夜駅に妻を待つ〉佐藤鬼房 〈山川をうちゆがめたる大雷雨〉上村占魚 夏に雨が降ったあとには、しばしば虹が現れます。 〈消ゆる時虹青色を残しけり〉軽部烏頭子 〈虹といふ聖なる硝子透きゐたり〉山口誓子 〈水平線の虹が捧ぐる朝の空〉沢木欣一 今年は関東北部の水瓶の貯水量が懸念されましたが、虹という自然現象のあざやかさ、そしてたちまちに消えてしまうはかなさの不思議さはまるで手品のよう。そして、初夏を飾るリボンのようでもあります。
夕暮れの空を彩る虹
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