暴風雪や厳しい寒さに見舞われた1月。春の静かな兆しに、静かな期待が込められた2月の詩歌 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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暴風雪や厳しい寒さに見舞われた1月。春の静かな兆しに、静かな期待が込められた2月の詩歌

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大寒波がもたらす雪・風・強烈な寒さに覆われた日本列島

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雪と枯木/降りしきる雪

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7年にわたる結核との闘病の末、34歳で死去した子規

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今が一年で最も寒さが厳しい時季と理解はしているものの、数十年に一度ともいわれる厳しい寒気は肌身にこたえます。
そんな季節だからこそ、歳時記には「寒し」「冷たし」などの季語が記されています。
ちなみに「冷たし」は「爪痛し」からきた言葉。なんとなく実感がありますね。
風も冷たく日が短く、身も心も縮こまりがちですが、そんな中にも詩情を見つけてしまう自由な詩のかたち、冬の俳句をご紹介します。

「爪痛し」の冬

永田耕衣の句は、北風に自分をたとえて吹きすさんでいるかのようです。
〈手で顔を撫づれば鼻の冷たさよ〉高浜虚子
〈しんしんと寒さがたのし歩みゆく〉星野立子
〈大空に月ぶら下り雲凍(い)てぬ〉池上浩山人
〈北風や青空ながら暮果てゝ〉芝不器男
〈海に出て木枯帰るところなし〉山口誓子
〈寒風吹く何か面白き事無きやと〉永田耕衣
冬の月や星は冴え冴えとして美しいですね。まるで氷のようです。空気が澄んで、光が鋭く見えます。
〈寒月やいよいよ冴えて風の声〉永井荷風
〈天の原空さへさえややわたるらんこほりと見ゆる冬の夜の月〉恵慶法師
〈寒星や神の算盤(そろばん)たゞひそか〉中村草田男
冷たい冬の空気に言葉が火花を立ててぶつかるような、ちょっと不思議でシュールな歌句を挙げてみましょう。
〈冬乾く冬のレールにパンの耳〉秋元不死男
〈降る雪を仰げば昇天する如し〉夏石番矢
〈冬鴎わがペン先に来つつあり〉皆吉司
〈枯れ木に耳を当てれば 遠くオルゴール〉富澤赤黄男
〈冬の大三角形よ背伸びせよ〉坪内稔典
〈何ものの声到るとも思はぬに星に向き北に向き耳冴ゆる〉安永蕗子

冬来たりなば春遠からじ

雪や霜も多くの詩歌に詠まれています。
正岡子規の句は、一見何でもない句のようですが、子規の境遇を知れば胸に迫ります。
〈いくたびも雪の深さを尋ねけり〉正岡子規
〈海の中鯖青くして雪止みぬ〉平畑静塔
〈雪を来て少女等の語尾舞ふごとし〉加藤楸邨
〈かん酒や深雪とならん深雪になれ〉渡邉白泉
〈月光をさだかに霜の降りにけり〉松村蒼石
春はまだ遠いのですが、「冬来たりなば春遠からじ」(冬が来たのだったら、春ももう遠くないはずだろう)の言葉もあります。
〈白葱のひかりの棒をいま刻む〉黒田杏子
〈「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ〉俵万智
〈冬の土こごりきびしくなりにけり球根を埋めてにじむもの待つ〉北原白秋
── どれも厳しい寒さを詠んだ冬の詩歌ですが、そこには春の静かな兆しへの期待がひめているようです。


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