あの四角い顔がスクリーンに22年ぶりに帰ってくることに驚いた人も多いのではないか。「男はつらいよ お帰り寅さん」の公開にあわせて発売された本書は寅さんファンの復習、予習には最適な一冊だ。

 シリーズ誕生から50年、50作のキャストなどこれまでの歴史を振り返る。最大の読みどころは、歴代マドンナや出演者約50人による「寅さん観」。撮影秘話や主人公の車寅次郎を演じた渥美清との関係をそれぞれ語っているが、それは同時に彼らが過ごした昭和がどのような時代であったかの思い出でもある。

 奇しくも、元号が変わった年に公開された本作をどう見るか。ノスタルジーに浸るのか、それとも新たな時代に元気よく踏み出すカンフル剤にするのか。「何、難しいこと言ってんだい」と寅さんに怒られそうだが。(栗下直也)

※週刊朝日 2020年1月24日号