史料をもとに我々の歴史認識がいかに曖昧であるかを皮肉や風刺を交えながら痛快に暴いてくれる一冊だ。

 例えば、保育園の騒音問題。近隣住民の反対運動で保育園の建設が中止や延期になるケースが全国で起きているが、実は1970年代から議論されており、当時も新聞沙汰になっていたとか。決して、世の中から人情が急になくなったわけではないことがわかる。

 待機児童は60年代には150万人を超えていたし、子どもを虐待する親は今よりも多かったという。むしろ、しつけと称して虐待が横行していたのが現実だ。

 美化した過去に逃げ込み、「伝統」を声高に叫ぶ人が増えているが、著者が指摘するように伝統は時代とともに変わる不確かなもの。伝統にふりまわされないことこそが、よりよき未来につながるのだろう。

週刊朝日  2018年11月30日号