沖縄に「反戦・反基地・平和」の印象を抱いていた著者はふとしたきっかけで、もう一つの沖縄の姿と向き合うことになる。「ちょんの間」と呼ばれる売春街が戦後に栄え、浄化運動で消えていった歴史だ。

 そこでは自らの意思で働く者もいたが、借金漬けで人身売買のような形で沈められた者も少なくなかった。「ゆいまーる」と呼ばれる共同体の網から漏れ、孤立した者にとって売春街は最後に行き着く場でもあった。店の経営者や地回りのヤクザにまで丹念に取材し、売春が担った役割や街の変貌を浮き彫りにする。

 沖縄の裏世界を気軽に消費する作品はこれまでもあったが、本書は売買春に焦点をあて、戦後史を紡いだ労作だ。変わりゆく沖縄で多くの人が目を背けた現実に光を当てている。

週刊朝日  2018年10月26日号