1980年代、一世を風靡したアイドル田原俊彦。本書は関係者への取材や、当時のスポーツ紙やワイドショーなどを丹念に調べ、「トシちゃん」の実像に迫る。

 高校生の田原がいかにしてデビューし、スターの座についたのか。そして、一時期、メディアからなぜ姿を消したのか。ひとつひとつのエピソードが懐かしくも新鮮だ。例えば、田原といえば、94年の「僕はビッグ」発言が顰蹙を買い、干されたとされるのが通説だが、著者は異なる事実を提示する。

 2018年の今、田原の露出は確実に増えている。本書を読むと、田原が変わったのではなく、時代が変わったことを痛感する。田原はいつの時代もぶれずに歌い、踊り、自分に正直に発言していた。田原の歴史をたどることで、日本の芸能界の変容も浮き彫りにした大作だ。

週刊朝日  2018年8月31日号