内向型人間の時代

ベストセラー解読

2013/09/11 17:53

 「巧言令色鮮(こうげんれいしょくすくな)し仁」とか「沈黙は金、雄弁は銀」なんて言われたのは昔の話。今じゃ沈思黙考型の人は「暗い」と敬遠される。就職活動を見ていても、内定が出るのは明るく元気な学生だ。たぶん企業は使いやすいんだろう。静かにじっくり考えるタイプの人には受難の時代だ。
 そんな人にとって、スーザン・ケイン『内向型人間の時代』は福音の書かもしれない。ポジティブ&能天気礼賛の本家みたいなアメリカだが、ほんとうに世の中を変えてきたのは沈思黙考型人間じゃないのか、というのである。内向型人間のリストに並んでいるのは、ニュートンやアインシュタイン、ショパンにプルーストら。グーグルのラリー・ペイジも『ハリー・ポッター』シリーズのJ・K・ローリングも内向型だという。ホントか?
 「はじめに」がかっこいい。公民権運動のきっかけになったエピソードから。バスの中で白人に席をゆずれと運転手に言われたローザ・パークスが発したのは、たった一言「ノー」。彼女は社会運動の先頭に立つ活発な人というより、静かで内気な人だったという。もっとも、そこから大きな運動にしていったのは外向型のキング牧師だったのだけど。
 外向型人間になるための自己啓発セミナー潜入ルポの部分に大爆笑。「明るい」と「おバカ」はほとんど同義語かと思えてくる。ハーバード・ビジネススクールもエリート集団というより、物事を深く考えない、ただの気持ち悪い人の集まりみたい。
 気質は変えられるのか、そもそも気質を決めるのは遺伝なのか環境なのかという議論も出てくる。
 愉快でおもしろい本だが、読んでいるうちに疑問もわいてきた。そもそも人を内向型/外向型に二分できるものだろうか。
 この本はアメリカでミリオンセラーになったそうだ。アメリカ人の3分の1から2分の1は内向型だという話もある。外向型信仰に疲れた人が多いということ?

週刊朝日 2013年9月20日号

内向型人間の時代

スーザン・ケイン著/古草秀子訳

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内向型人間の時代

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