AERAdot.編集部調べ
AERAdot.編集部調べ

 砂防学が専門の信州大の平松晋也教授は、こう指摘する。

「各地点で土石流の力を計算し、建物の強度を比較して、どちらが強いかでイエローゾーンなのかレッドゾーンなのかが決まる。盛り土で土石流の量が増えれば、イエローゾーンだったものが、レッドゾーンに変わることもあります」

 では、熱海市以外のリスクはどうなっているのか――。編集部では、人が多く集まりやすい主な観光地がある自治体を対象に、土砂災害警戒区域の指定状況を調べた。

■避暑地の伊豆市も約1千箇所

 浜名湖などで有名な浜松市は、3018カ所が土砂災害警戒区域として指定されていた。市北部に広がる山林がイエローゾーンの多さにつながっているとみられるが、観光スポットにリスクがないとも言い切れない。鍾乳洞で有名な竜ヶ岩洞は竜ヶ石山のふもとにあり、土砂災害警戒区域に指定されている。浜名湖周辺でも小高い山があり、警戒区域が散見されている。

 避暑地としても人気の伊豆市は土砂災害警戒区域が1179カ所だった。自然が多く、温泉もあるのが魅力だが、市危機管理課の担当者はこう語る。

「伊豆半島は『南から来た火山の贈り物』というように、もともとは火山活動によってできた島です。火山からの噴射物が積み重なってできた地質で表土が薄いところが多く、土砂崩れが起きやすいです」

 自然に囲まれ、白山信仰でも知られる郡上市(岐阜県)は、1664カ所だった。県のほぼ中央に位置するが、警戒区域が多い理由について市の担当者はこう説明する。

「市には平地が少なく、山と川の間に家が点在している。山の中に市があるイメージです。崖が多いのも指定箇所が多くなる要因になっている」

■人気温泉地がある自治体にも「指定」

 観光客が集まる主な温泉地の土砂災害警戒区域リスクはどうか。人気の温泉は火山が近くにあることも多い。

 地形・地質などに詳しい、だいち災害リスク研究所の横山芳春所長はこう語る。

「温泉は火山の恵みの一つ。山間にある温泉が多く、当然、土砂災害のリスクはある。過去には温泉街で被災した事例は珍しくない。宿泊先にどういうリスクがあるか見ておいたほうが安心です」

 城崎温泉で有名な豊岡市(兵庫県)は1846カ所と多かった。山の中にも人家があり、集落全体が警戒区域に入っているところもある。温泉街の周囲は山に囲まれており、谷あいの街だ。市の防災課の担当者はこう語る。

次のページ
人気の温泉地草津は…