私立、公立、国立の中高一貫校には、それぞれどんな特徴があるのだろうか。指導経験の長い2人が「親が知っておきたい基礎知識」を解説する。AERAムック『偏差値だけに頼らない 中高一貫校選び2022』(朝日新聞出版)より一部抜粋して紹介する。

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■学校の選び方が大切。進学実績ばかりを意識せずに!

 中学受験の世界には「7・5・3」という言葉がある。7校に出願し、5校を受験し、3校に合格するのが理想的という考え方だ。

 志望校選びに際しては、6年間通うという点を念頭に置く必要がある。栄光ゼミナールの藤田利通さんはこう話す。「お子さんの性格に合うのは、自主性を重んじる校風なのか、面倒見の良さなのか。学校文化は大きな判断基準になるでしょう」

 藤田さんは、自由な校風のなかでは自分で考えて行動することがとても大切なため、勉強だけでなく日常生活も含め、わが子の性格を考慮して志望校を選ぶよう勧める。

 私立・国立中学校の受験生とその保護者へのアンケート調査(栄光ゼミナール調べ、別表)によると、志望校を選ぶうえで学習面について重視したこととして、最も多かったのは「学校の教育方針・校風」(受験生64.0%、保護者75.2%)。一方、受験生と保護者のあいだで開きがあった項目は「校舎や設備が整っている」(受験生61.6%、保護者22.1%)、「中高一貫指導」(受験生25.6%、保護者41.9%)、「大学への進学実績」(受験生17.5%、保護者33.8%)だった。

栄光ゼミナール「私立・国立中受験生アンケート」。調査期間は2021年1月16日~3月18日で、対象は私立・国立中学校の受験生とその保護者
栄光ゼミナール「私立・国立中受験生アンケート」。調査期間は2021年1月16日~3月18日で、対象は私立・国立中学校の受験生とその保護者

 都立小石川中等教育学校と成城中学校・高等学校(東京)、公立と私立で校長を務めた経験を持つ栗原卯田子さんはこう語る。

「大学の進学実績だけで選ぶと、子どもは輝きません。部活動や海外研修など、6年間でお子さんに経験してほしいことも重視するといいと思います」(栗原さん)

■スピード感のある私立は時代の変化にうまく対応

 私立は現場と設置者側との距離が近く、変化に柔軟に対応できる。20年春の新型コロナによる休校要請の際も、ICT(情報通信技術)の活用やリモート授業の実施の早さなどが注目された。「新しい取り組みが柔軟にすぐ行えるのが私立の特長です。私も成城中学では、高校に接続する『数学統計』など独自の学びを設定できました」(栗原さん)

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菅野浩二
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