丸山ゴンザレスがリスペクトする蔦屋書店の「旅の達人」 (1/5) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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丸山ゴンザレスがリスペクトする蔦屋書店の「旅の達人」

連載「カオスな現場の取材メモ」

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「旅のコンシェルジュ」の森卓也さん(撮影/丸山ゴンザレス)

「旅のコンシェルジュ」の森卓也さん(撮影/丸山ゴンザレス)

無銘の旅人~記されることのなかった偉大な旅路


 世界中を旅するジャーナリストを自称している私、丸山ゴンザレスだが、別に私が特別すごい旅人というわけではない。世の中には知られていないだけで、とてつもない旅人がいるからだ。私のまわりだけでも「あいつはすごい」と言われる旅人が何人もいる。しかも、彼らは作家やYouTuberとして記録を発表していなかったりもする。

 すごい旅をしているのに、それが世に知られていない。ある意味、「無銘」である。そんな“無銘の旅人”たちに「どうして旅をしているのか」「どんな旅をしてきたのか」を聞いていこうと思う。


世界3周しても、まだ旅の途中 「旅のコンシェルジュ」森卓也さん

 今回紹介したい旅人は、「日本で一番旅をしている書店員」を名乗る森卓也さん(46)。福岡の六本松 蔦屋書店で旅のコンシェルジュをしている森さんは、これまでに世界を3周、120カ国以上を旅してきた旅の達人だ。コンシェルジュというのは、専門知識を活かして本の仕入れから、お客さんの相談、イベントの企画まで幅広く手掛ける専門職である。

 現在も旅のコンシェルジュとして働きながら、休みになれば旅に出るという森さん。世界を3周してなお、旅に出続けるのはなぜなのか。彼を旅に掻き立てるものは、一体何なのか。そのルーツを探ってみた。

【写真】森さんの管理する旅行本コーナー

*  *  *
 現在46歳の森さんは、福岡で生まれ育った。本格的に海外に出たのは大学に入ってから。ドイツ文学を専攻していたこともあり、交換留学で二ヶ月ほどドイツに滞在。その際にヨーロッパ各地をバックパッカーとして放浪する。ただ、当時はバックパッカーへの憧れはなく、卒業後はまったく別の方向に人生を歩みだした。

「小説家になろうと思って上京し、友人の伝手で仕事をしながら執筆活動をしていました」

 海外に出ることがないまま、10年ほどを過ごした。そこに家族の介護の問題が浮上して、帰郷することになった。
「母はすでに亡くなっていたのですが、父が病気になり、祖母も高齢だったので『潮時かな』という感じで福岡に戻ったんです」

 福岡に戻ってほどなく、取り巻く環境が一変した。
「父の容態が急変して亡くなりました。婆ちゃんと一緒に暮らしていこうと思っていたら、今度は一ヶ月もしないうちに婆ちゃんが亡くなって。一人になってしまったんですよ」

 帰郷後一ヶ月で、父親と祖母との死別。このとき35歳。森さんの中で変化が起きる。
「人生は何があるかわからない。人はいずれ亡くなるんだから、やりたいことをやるしかないって強烈に思ったんですよね」

 「世界一周航空券」を購入し、一年と区切って世界一周への旅に出た。西廻りに、ぐるりと地球をまわった。当時は旅慣れておらず、旅先にコンタクトレンズの替えを3年分も持っていくような調子だった。


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