世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレスが、取材先でメモした記録から気になったトピックを写真を交えて紹介する。

【写真】これは射撃場なのか…?

設備はなにもないが、決まりも特にない……って、それでいいのか?
設備はなにもないが、決まりも特にない……って、それでいいのか?

■「雑」な射撃場に行ってみたい!

 フィリピンのセブ島を訪れる観光客のお目当ては、アイランドホッピングやビーチリゾート、英語の勉強といったところだろう。そんな真面目な旅行者が気にもとめない分野がB級スポット巡りである。今回は私が巡ってきたB級スポットの中で屈指の自由度を誇る射撃場を紹介したい。

 セブ島は密造銃で有名だと言われていた。セブ島で簡単に密造銃を見ることはできないが、本物の銃を使った射撃はできる。それがレジャーになっているぐらいだ。

 ネットで検索するといくつか出てくるが、だいたい5~6000円で数十発ほど射撃させてくれる業者が多い。こうしたところはきちんとしているので、的に向かって撃てるし、インストラクターが横について、撃ち方も指導してくれるのだ。

 だが、せっかくフィリピンに来たなら、もっと「雑」な射撃場に行ってみたいと思った。他意はないが、フィリピンに対してゆるくて遊べるような場所を本能的に求めてしまうのだ。

射撃というか、なんというか、これこそ私が追い求めていた理想的な雑さである
射撃というか、なんというか、これこそ私が追い求めていた理想的な雑さである

■壁も仕切りもない!的は崩壊…いくらなんでも雑すぎるぞ!

 いざ「雑」な射撃場を探すのは、意外と難しい。人の紹介でたどり着いてしまうのが一番簡単だが、それ以外だと「英語」で検索するといいかもしれない。日本人向けに営業している射撃場は、かなりきちんとしている。それは、お客さんとして来る日本人が安全性を求めたり、僅かなリスクも嫌ったりする傾向があるからかもしれない。

 あれこれ英語で検索すると、一番やる気のなさそうなサイトがあった。そこで申込みをして、実際に射撃場に行ってみた。すると、そこには理想的な射撃場があった。

 射撃場なのに的が雑……というか崩壊している。隣の人と隔てる仕切りもなければ、屋根さえない。射撃をするときも、何か教えてくれるわけでもない。撃ち終わったら帰るだけ。とにかくフリーダムなのだ。

 凄くシンプルだが、耳栓も貸し出してくれないので、ダイレクトに銃声を耳にしてしまった。おかげで、今でも適当な破裂音と銃声の違いは、なんとなくわかるようになってしまったのである。(文/丸山ゴンザレス)

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丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

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