ヨドバシホールディングスが、西武池袋本店(東京・豊島区)の低層階に出店する計画を一部変更する検討に入った。ブランドイメージの棄損につながるといった地元などからの反発に配慮した形だが、元西武百貨店社長の水野誠一さん(77)は「苦し紛れの譲歩案。根本的な問題の解決にはならない」とヨドバシ側の姿勢に強い疑問を口にする。
そごう・西武を傘下に持つセブン&アイ・ホールディングスは、米投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」にそごう・西武を売却することを決めている。西武池袋本店の1階には「ルイ・ヴィトン」や「ロエベ」「グッチ」などの高級店が並ぶが、その低層階にフォートレス社と協力関係にあるヨドバシカメラが出店する計画が持ち上がっていた。
だが、昨年12月に豊島区の高野之夫区長(今年2月に死去)が、西武池袋本店が長年、文化の発信拠点の役割を担ってきたことを挙げ、「文化の土壌が喪失する」「海外ブランドショップの撤退を招き富裕層が離れる」などと低層階への出店反対を表明した。地元には高野区長に同調する声がある一方で、行政の長の異例とも言える民間介入に、「越権行為」などと批判も出た。
その後、売却時期が無期限で再延期され、先行きに不透明感が増すなかで浮上したヨドバシ側の譲歩案。だが、高野区長と同様に低層階への出店そのものに強く異を唱えるのが元社長の水野さんだ。
「ヨドバシ側は『低層階に出店するがルイ・ヴィトンなどは残してあげてもいい』という姿勢だと耳にしていますが、そういう問題ではありません。西武百貨店とヨドバシとでは世界観が違い過ぎるのです」と水野さんは危機感を募らせる。
なかでもパルコ寄りの1階にある「ルイ・ヴィトン」は、昨年10月に大規模なリニューアルをしたばかり。ヨドバシの出店により移転にでもなれば、「ルイ・ヴィトン」グループの大きな反発も予想される。
水野さんが続ける。