英語圏の赤ちゃんは文法を習う前から自然と英語を話せるようになるのに、日本人は何年も英語を勉強してもうまく話せません。やはり英語は早く始めないと取り返しがつかないのでしょうか? 『AERA English2023』(朝日新聞出版)では、最新の脳科学をもとに言語習得の仕組みを解明してきた東京大学教授の酒井邦嘉さんに、大人になってから科学的に英語を習得するヒントを伺いました。

MENU 「習うより慣れろ」は脳科学からみて正しい  試験ありきの学びは疑問 「到達度」で評価すべき 実践!英語を自然に習得するための10のヒント

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 スイスに本部をおく教育機関「EFエデュケーションファースト」が2022 年にまとめた英語力調査によると、英語を母語としない111カ国・地域のうち、日本は80 位。参加国が増えるにつれて、年々順位が下がるという不名誉な結果が続いている。

 しかし、私たちは母語である日本語ならば、幼少期から意識しなくても気づけば流暢に話せている。驚くほどのスピードで、複雑な言語の仕組みを幼児が操れるようになるのは、改めて考えると神秘的だ。人間はどうやって言葉が話せるようになるのか。この謎の糸口となるのが、アメリカの言語学者チョムスキーが提唱し、東京大学教授の酒井邦嘉さんが実証してきた「普遍文法」だ。

チョムスキーの生成文法理論
チョムスキーの生成文法理論

「赤ちゃんの脳には、全ての言語に共通する法則『普遍文法』が組み込まれています。ポイントは、日本語も英語も関係なく普遍的であり、誰もがその普遍文法を持って生まれてくるということ。高度な言葉の秩序を脳内に備えているからこそ、子どもが母語を生まれて間もなく発話し、自動的に獲得できるのです」(酒井さん)

「習うより慣れろ」は脳科学からみて正しい 

「脳の言語地図」
酒井さんは、チョムスキーの唱える「普遍文法」が、左脳の「文法中枢」の働きによることを、MRIを駆使して実証してきた。この「言語地図」は、文法を操る時、文章や単語を理解したり、音韻を聞き分けたりする時、それぞれ四つの異なる部位(中枢)が、連絡し合いながら言語能力が確立していることを示す。
「脳の言語地図」 酒井さんは、チョムスキーの唱える「普遍文法」が、左脳の「文法中枢」の働きによることを、MRIを駆使して実証してきた。この「言語地図」は、文法を操る時、文章や単語を理解したり、音韻を聞き分けたりする時、それぞれ四つの異なる部位(中枢)が、連絡し合いながら言語能力が確立していることを示す。

 酒井さんの研究チームは、脳の局所的な血流の変化を観察する「機能的磁気共鳴映像法(fMRI)」という方法で、人間の言語の文法判断に共通して働く「文法中枢」が、左脳の前頭葉の一部にあることを突き止めた。この「文法中枢」がいわば「普遍文法の座」であり、言語能力の要ともいえる役割を果たしているという。

「『聞く・読む』が脳に対する『入力』で、『話す・書く』は『出力』という分類をしたとして、大切なのは両者をつなぐ普遍文法の働き、つまり『文を生成する力』です。脳内の文法中枢を介して、音や語彙を入力し、構造をもった文が無限に出力されます」

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AERA dot.編集部
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