「女らしく」より「自分らしく」。女子伝統校の学び舎に集う仲間は、好きなこと・得意なことを切磋琢磨する好敵手です。未来社会を豊かにイノベイトする女子教育を8校の校長が熱く語ります。
アルカディア市ヶ谷7階「雲取」(2024年5月17日)
監修/森上展安
森上教育研究所
代表
司会/高橋真実
森上教育研究所
アソシエイト
鷗友学園女子中学高等学校
校長 柏 いずみ
かしわぎ・いずみ
恵泉女学園中学・高等学校
校長 本山 早苗
もとやま・さなえ
実践女子学園中学校高等学校
校長 湯浅 茂雄
ゆあさ・しげお
淑徳与野中学・高等学校
校長 黒田 貴
くろだ・たかし
昭和女子大学附属
昭和中学校・高等学校
校長 真下 峯子
ましも・みねこ
田園調布学園中等部・高等部
校長 清水 豊
しみず・ゆたか
豊島岡女子学園中学校・
高等学校
校長 竹鼻 志乃
たけはな・しの
三輪田学園中学校・高等学校
校長 塩見 牧雄
しおみ・まきお
各校が受け継ぐ伝統の
教育理念と校訓
司会:高橋
Q1
本日は首都圏伝統女子校の中でも先進教育に定評ある8校にお集まりいただきました。はじめに、学校の教育理念や校訓などについてご紹介ください。
本校は、儒学者を父に学問を修めた三輪田眞佐子が1887年に創立しました。校訓は「誠のほかに道なし」。誠実であること、誠実であろうとすることこそ人として最も大切な在り方、生き方であるという意味です。この校訓は教職員、在校生、卒業生の誇り。この校訓を生きる上での指針とする女性を世に送り出すことが、本校の使命です。教育理念は「徳才兼備の女性の育成」。徳とは豊かな人間性、才とは高い知性・学識、狭い意味では学力です。この両方を兼ね備えた女性の育成をめざしている。しかも才よりも徳を、学力よりも人間性を前面に置いているところが一番の特徴といえます。
塩見
(三輪田学園)
1935年、東京府立第一高等女学校同窓会・鷗友会が、恩師市川源三の教育スピリットを礎に設立しました。「女性である前にまず一人の人間であれ」。良妻賢母教育の時代に画期的な精神です。また内村鑑三に学んだ理事長石川志づがキリスト教精神を全人教育の柱としました。校訓は「慈愛(あい)と誠実(まこと)と創造」。慈愛は自他ともに大切にし、誠実は神に与えられた賜物(たまもの)を世のために磨く姿勢。創造は自分の枠を超え新たな価値を生み出すこと。この土台に私は「タフ」という言葉を提言しました。混迷する社会を女性が切り拓くにはタフでなければならない。タフで愛ある人として、活躍の場を広げてほしいと願っています。
柏
(鷗友学園女子)
1892年、尼僧の輪島聞声(もんじょう)が「女性の淑徳(よい徳を身に着けること)」を建学の理念とし、小石川伝通院内に開校しました。わずか5人の生徒から発展し、現在は幼稚園から大学を擁する総合学園です。輪島聞声は「進みゆく世に遅れるな。有為な人間になれよ」と教えました。仏教において社会貢献を旨とする「利他」の精神は、本校生徒に「感謝の心」「おかげ様の精神」として息づいています。校訓は「清純」「礼節」「敬虔」。仏教による情操教育には日本文化特有の穏やかさがあり、来校する方々には居心地のよい学校といわれます。女性という枠を超え、自分の持つ「いいもの」を素直に発揮できる学び舎です。
黒田
(淑徳与野)
1926年の開校で、2年後に100周年を迎えます。創立者の西村庄平は、日本郵船の外国航路の船長として欧州の教育制度に触れ、退職後、女子教育に尽力しました。建学の精神「捨我精進」は初代校長・川村理助が唱えたもの。難しい言葉ですが、生徒には「自分を捨てることではなく、自分を超えること」だと教えています。そのためには結果を恐れず挑戦し、自分を磨くことが大切。そして自分を超えるために、自分を知る必要があります。中高6年間で自分と向き合い、「自分は何ものか」を問い、没頭できるものをみつける。成長の喜びが、人生を切り拓く勇気を与えます。
清水
(田園調布学園)
1892年に加賀藩士夫人の河村ツネが2人の娘とともに開いた女子裁縫専門学校が始まりです。戦後池袋に移転し、校名を豊島岡女子学園と改め、建学の精神を受け継ぐ教育方針「道義実践・勤勉努力・一能専念」を打ち立てました。人としての正しい道と思いやりの心を大切に、努力を積み重ね、才能を伸ばします。毎朝実践する5分間の運針は、心を無にし、継続の力を体感する本校の伝統です。「志力を持って未来を創る女性」の育成に向け、常に新しいチャレンジを進めます。全員参加のクラブ活動や学校行事も盛ん。誰にでも居場所があり、個性豊かな生徒たちは切磋琢磨しつつ生涯の友情を育んでいます。
竹鼻
(豊島岡女子学園)
創設者の河井道は、新渡戸稲造の薫陶の下、米国留学を経験した一人のクリスチャン女性です。戦争に向かう国際情勢に心を痛め、いのちを育む女性こそが平和な世界を作り出せると、1929年に開校しました。プロテスタントの信仰のもと「神を畏れ、人を愛し、いのちを育む」ことがスクールモットーです。教育の柱は主体的に生きる力となる「聖書」、多様性を受容する「国際」、他者と協働する「園芸」の3つ。特に中1と高2で必修の園芸は、畑を耕し、地に満ちる神様の恵みを実感する貴重な体験でしょう。国境を越え、平和への不屈の意思をもつピースメーカーを育てることを、創立以来希求しています。
本山
(恵泉女学園)
近代女子教育の先駆者・下田歌子によって1899年に創設されました。女性に教育は必要ないとされた時代に、実践的な学業をもって自立の基礎とし、社会貢献できる人材育成を目指したのです。下田が好んだ詩に「揺籃(ようらん)を揺るがすの手は、もってよく天下を動かすことをうべし」があります。愛情に満ちた手で世界を変革せよの意で、たゆまぬ女性の努力がなければ、まさに現代も国際情勢の好転は望めないでしょう。本校には生徒たちの高い志に応える学びの自由があります。教師が、仲間が、一人ひとりのトライ&エラーを見守り応援します。学園はいつも笑顔に溢れています。
湯浅
(実践女子学園)
「世の光となろう」。こども園から大学院までワンキャンパスで学ぶ昭和女子の建学の精神です。設立の1920年は、第一次世界大戦後の復興が喫緊の課題。創立者人見圓吉は「正しき強き思慮深き女性が互いに磨き合い、この世を立て直す」との決意を込めたのです。ソサエティ5.0の未来社会へ向かう今もまた、女性の活躍が求められています。自ら考え行動し、科学的思考力を養い、人々を幸せにするイノベーションを牽引する。生徒一人ひとりの適性を伸ばすため本科、グローバル留学、スーパーサイエンスの3コースを用意しています。
真下
(昭和女子大学附属 昭和)
生徒のポテンシャルを
引き出す探究活動
司会:高橋
Q2
時代の変革期にあって、果敢な課題解決能力が求められています。各校で工夫を凝らされている探究活動についてお教えください。
「探究」とは、日常で感じる疑問を自分ごととして捉え、社会のプラスとなる解決に導くことだと考えます。中学は希望者が、中3からは授業内で探究活動に取り組み、各自論考を進め、成果を発表する場「Academic Day」は年に2回あります。他者が納得するデータ的裏付けが求められ、高2では全員が論文を提出します。もう一つはモノづくりを競うT‒STEAM:JrとT‒STEAM:Pro。失敗から学び、試行錯誤を繰り返してアイデアを形にする胸躍る体験です。今年の課題は「障害を回避する自律走行ロボット」。これらの実績から2018年よりSSH指定を受けています。
竹鼻
(豊島岡女子学園)
広く一般に、探究的学びが喧伝される前から、中学で「創作・研究」、高校で「研究小論文」を1年かけて作成してきました。テーマは各自が設定し、指導教員が支援。中学では毎年2月に「芸術研究発表会」を実施して発表します。ただ、単に興味あるテーマを選択すると、ネットの周辺情報の検索に頼り、論考が発展しません。そこで昨年から内容をブラッシュアップし、中1は多くの本を読んでテーマを探し、中2ではテーマに関連する本を最低3冊比較検討します。「世の中にはこんな見方、考え方がある」と一挙に視野が広がり、3年でいよいよ自分の見解をまとめる作業に入ります。アカデミズムの基本的研究姿勢を学び、発想力を鍛えます。
黒田
(淑徳与野)
どの教科も探究的学びを心掛けていますが、ハイライトは中3現代社会の「4000字に及ぶレポート」でしょう。社会が抱える「答のない問」を自ら見つけ、徹底的に掘り下げる試みです。手ごろな教材もない、教師のお膳立てもない。一人で資料と訪問先を探して専門家に取材し、フィールドワークをします。試行錯誤の葛藤から答を導き、さらに小論文を書いてプレゼンを行います。テーマの例は「食糧問題におけるフードテックの可能性」「日本のテレビドラマとジェンダー」「eスポーツによる地方創生」など。OGたちは、社会に出て難問にぶつかっても、臆さず乗り越えられる最強の試練だったと語ってくれます。
柏
(鷗友学園女子)
探究学習の目的は教育理念実現のため。授業は中1~高2まで週1時間。中学では、課題を自分で見つけることが難しいので、こちらから課題を設定して「デザイン思考」を徹底的に教えながら課題解決を図ります。課題は、学校での困りごとなど身近なことから、地域、社会へと広げていきます。中3では、協力企業に課題を出してもらい、解決策を練り上げます。高校からは自分の興味関心に没頭するBOTTOプロジェクトに発展。日本政策金融公庫の高校生ビジネスプラングランプリで優勝する、トビタテ!留学JAPANでルワンダを訪ね探究活動を行うなど、外の世界に挑戦する元気な生徒が増えています。
清水
(田園調布学園)
教室から飛び出して、リアルな探究体験を重視しています。本学園には、富士山麓の東明学林学寮と、房総半島館山の海辺に建つ望秀海浜学寮があり、毎春研修を実施。各地域の歴史、文化、産業、行政の課題などのフィールドワークには絶好の舞台です。地域の方と交流したり、役所を訪ねたり。自然に恵まれる一方、少子高齢化や地域活性など現代日本の問題点も浮き彫りになります。「知る➡考える➡行動する」探究サイクルが回り、生徒たちは真剣。情報の授業では生成AIを使いこなすプロンプト(指示や質問)にトライ。時代を先取りする頭の柔軟体操は、現代の必須科目です。
真下
(昭和女子大学附属 昭和)
2020年から本校オリジナルの探究授業「未来デザイン」をスタートさせました。中1~高2の5年間のプログラムで“広がる・深まる・変わる”体験を通し、自分の枠を超える学びを展開します。28人の教師が連携し工夫を凝らした教科横断型の授業は大学レベル。生徒が論文を互いに評価し合うシーンも、良い刺激になっています。これを評価され2022年にユネスコスクールに認定されました。ユネスコ国際デーには、生徒主体で環境やジェンダーのシンポジウムを開くなど成果がでています。
湯浅
(実践女子学園)
探究活動の目的は生き方を考え、人生の土台をつくること。本校では礼拝の時間に述べる「感話」がその要です。日頃感じていることを中学生なら原稿用紙3~4枚、高校性は7~8枚。毎週のクラス礼拝や、金曜日の中学/高校生徒礼拝で語ります。1人が年3回ほど担当。書く・話す・聞く力の鍛錬になるのはもちろん、自分と向き合う哲学的思考と、課題解決への論理的思考を深めることができます。同級生や先輩の心情に共感する貴重な経験です。誰もが互いを受け入れ、自分らしくいられる環境は、礼拝での感話が支えています。
本山
(恵泉女学園)
探究では得意なこと、これなら勝負できるということを最低一つは見つけるようにと言っています。人生を拓く矛(ほこ)を手に入れることができます。中学探究MIWADA‒HUBは週2。高校探究MIWADA‒LABは週1。学びの楽しさを日常のテーマから発見します。「エシカルライフ」を取り上げた生徒は近隣の無印良品にアポをとり、店長にオーガニックコットンの話を聞きました。そこから安価な通常のコットンには農薬による土壌汚染や農民の健康被害、時に児童労働や強制労働の可能性があることまで徹底探究。HUBは自分と学問を、自分と社会を、現在の自分と将来の自分を「つなぐ」場です。
塩見
(三輪田学園)
多様で高度な学びに
出合える高大連携
司会:高橋
Q3
高大連携は偏差値ではかれない、大学の学びの形を知るよい機会。積極的にアピールする大学も増えてきました。取り組みについて具体的にお願いします。
今年度より「医進コース」を設けました。近年、理系学部への進学者が5割を超え、理系人材育成の社会的ニーズに応える機が熟したということです。幸いお茶の水女子大学のサイエンス&エデュケーション研究所との連携が決まりました。これまでも教育機関や自治体の理科プロジェクトの支援実績があり、非常にハイクオリティ。同大の教員や研究者が来校し、学年ごとに年8回、理科実験講座を実施します。大学や企業など、プロフェッショナルの研究をリアルに知ることは、生徒の意欲をおおいに高めるでしょう。今後は医療系志望者のために、大学医学部との連携も積極的に図っていきます。
黒田
(淑徳与野)
探究を充実させ、社会での学びにつながる連携をしています。本校卒業生の研究者が仲介したJAMSTEC(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)との連携では、連携研究者の研究は多岐に渡り、頼れる存在です。豊島区との連携も進み、「Academic Day」への参加や課題提供もいただいています。日経サイエンス(サイエンス講座)、三菱UFJモルガンスタンレー証券(家庭科実習や「株の力」)のほかに、筑波大学(数理最適化宿泊研修)や東京電機大学(T‒STEAM)、工学院大学、電気通信大学などにもアドバイスを依頼しています。
竹鼻
(豊島岡女子学園)
大学とその先にある社会とのつながりを知ることは、生徒が将来を描く上で大切です。連携協定締結は北里大学と東京都市大学。東京都市大学は近いので、大学の実験設備を使わせてもらう、教授・学生と一緒に、探究活動を行うなど実施しています。課題に応じての連携は10大学以上。昨年度は、情報科コラボ授業として、日本初の「AIが審理する模擬裁判」を企画した東京大学の学生と一緒に、「AIが人を裁く未来」について考える授業を実施した。AIが司法を実装するにはどのような課題・懸念、制度設計等が必要か、議論では多様な角度から様々な意見が挙がり、生徒は自分ごととしてとらえ、深く考えることができました。
清水
(田園調布学園)
大学では、東京外国語大学と提携を結んでいますが、三菱UFJモルガン・スタンレー証券とも金融経済教育に係る連携協定を締結しています。提携した大学だけでなく、先ごろある国立大学大学院生から合同プロジェクトを提案されています。Ⓐ科学で健康な社会を作る、Ⓑ交通の社会課題を数理で解く、Ⓒ工学技術の社会実装と起業化、Ⓓ加速膨張する宇宙との関わり方、これら4テーマから工学的切り口で考察します。十代の若い感性が触媒となってブレイクスルーが起こるかもしれません。本校教員も参画し、その名称は「学びの翼プロジェクト」。ワクワクしております。
柏
(鷗友学園女子)
お隣の法政大学との高大連携には3本の柱があり①現代の諸問題について考える「高大連携講座」を、各学部の先生方がオムニバス形式で実施。②「協定校推薦入試」は、最大30名の生徒が推薦で進学が可能です。③「特別聴講制度」は、オンデマンドのデータサイエンス講座の制度。法政大学に入学した場合、履修単位として認められます。他にもさまざまなプロジェクトがあります。一例に震災対策があり、法政大学も本校も避難所指定を受けていますから、必要物資や地域の方、特に障がい者の誘導やケアなど具体的にプランしました。津田塾大学と高大連携科目履修が始まりましたし、東京女子大学とも進めています。
塩見
(三輪田学園)
順天堂大学、東京女子大学、津田塾大学、日本女子大学と正式に連携。医療系志望の生徒は順天堂の理学療法学科や診療放射線学科のオンライン講義に興味津々でした。他にテーマ単位で立教大学、聖路加国際大学など7大学と連携中。とりわけ東京都市大学×日産自動車女子研究員とのスターリングエンジン研究、同大学×化学系企業EVONIKとのモノ作り教室は、研究プロセスの面白さに加え、企業で働く女性の生の声を聴くことができ、とても有意義であり、材料工学という分野も新鮮でした。アジアの発展も意識し、シンガポール国立大学の学生とオンラインで交流を続け、春休みに現地を訪ねる研修も実施しました。
本山
(恵泉女学園)
附属校ですので学園の様々なリソースを活用できます。大学が米国に設置した教育施設・昭和ボストンでの研修、キャンパス内のThe British School in Tokyo SHOWA(英国義務教育課程)への短期留学、米国テンプル大学ジャパンでの体験授業。グローバルな教育環境です。また高2で高校課程を修了し、昭和女子大へ進学できる五修生制度、昭和大学で3年と協定大学で2年学ぶと、双方の学位を取得できるWディグリープログラムもあり、将来の選択肢が広がります。連携協定は東京理科大学など5大学。女性の理工系進学を応援する山田進太朗財団(メルカリ創業者)とも協力関係を進めています。
真下
(昭和女子大学附属 昭和)
併設大学として実践女子大学があり、生徒全員が恩恵を得られます。高1、2年で渋谷・日野キャンパス見学と体験授業。大学図書館利用や大学所蔵物閲覧もOK。一部授業の聴講と単位認定制度があり、取得単位は他大学でも利用可能など盛りだくさんです。理系を志望する生徒の増加から、芝浦工業大学と連携協定を結びました。サマーインターンシップ参加者は20人規模の協定校推薦があります。神田外語グループとも昨年連携協定を締結。併設大学でグローバル人材育成を目指す国際学部が開設されました。渋谷という立地からIT企業が数多くあり、企業連携も盛んです。先般はMIXIのプログラミング授業があり、生徒は興味津々でした。
湯浅
(実践女子学園)
夢を叶える、女子校なら
ではのキャリア教育
司会:高橋
Q4
中高の6年間は、将来ビジョンを少しずつ形にする時期です。特に女子校は異性の目を意識せず、自分らしく成長できる貴重な学びの場。社会に巣立つためのキャリア教育をお聞かせください。
まず世の中に関する興味関心を広げることが大切です。学問も仕事も、働き方も生き方も、いろいろな形があって、一人ひとり違う。土曜プログラムと探究の授業にはそのヒントがたくさんあります。土曜プログラムは年間8回行います。語学、文化、地域、科学など約170の講座があり、講師は外部から招聘しています。高等部の探究の時間には、高1の時に視野を広げるために、自分の好きなこと、得意なことをいかして海外で活躍している講師10名によるオンライン・ワークショップを8コマ使って実施しています。生徒たちは、好きな講座に参加できます。自分の生き方を考えるには、自分を見つめて自分を知ることが大事であるということを実感します。
清水
(田園調布学園)
先ほどの「感話」も一例ですが、本校は先輩の話を聞くチャンスがたくさんあります。進路の内定した高3生が後輩に生活ガイダンスや進路ガイダンスを実施したり、チューターとして勉強を指導したり、信頼関係で結ばれています。本格的な進路ガイダンスは、高2生を対象に、進級前の3月に実施。大学生や大学院生のOG50名が集合します。興味ある学部・学科の先輩をグループで囲み、質疑応答。憧れの先輩のアドバイスは本当に励みになるようです。総合型・推薦型入試に向け小論文や面接指導を行うと、表現力が豊かなことに探究学習の成果を実感します。科学的思考力も伸びており、理系への進学希望者は増加傾向に。また音楽、美術にも力を入れ、選択授業の時間数は多めに設定されています。芸術系大学に進む生徒も多く、自分らしい進路実現の一つと喜んでいます。
本山
(恵泉女学園)
本校の文系対理系は約6対4。理系志望者が増加傾向で、その半数は医療系に進学。それは病院でのボランティアの影響かもしれません。「自分の道を行く」という姿勢が感じられ、頼もしく思っています。女子校では男女の性別役割がなく、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)に捉われずに済むことも大きいでしょう。創立者三輪田眞佐子は「天は男子の上に、女子をつくらず。男子の下に、女子をつくらず」と著書に記しました。その意気やよし!中学の卒業論文で、サブサハラの飢餓と貧困、感染症に苦しむ子どもを取り上げた生徒がいます。慶應義塾大学からロンドン大学に留学後も、世界の貧困問題研究を継続。現在は大手新聞記者として、社会の矛盾に切り込んでいます。キャリア教育とは生徒たちに「未来の自分との出会いの場」を用意することです。
塩見
(三輪田学園)
卒業生は最良のロールモデルですから、折にふれて来校いただき、講演会やディスカッションを実施しています。その時お願いするのは、仕事を通してどういう風に自分が変化していったか、具体的に語っていただくこと。就職はゴールではなく、人によっては結婚・出産・育児などのライフイベントもあり、人生はずっとずっと続きます。一人の女性医師は出産後、新生児の育児と、新生児の診察のギャップにショックを受け、改めて大学院で周産期医療を修めました。現在は臨床医兼教授として活躍中です。映画プロデューサー、舞台装飾家、IT企業家、JAXAなど様々な分野で頑張るOGたちが、本校で異業種交流をして新たなビジネスを立ち上げる例もあります。人生を楽しくクリエイトするパワーの源がキャリア教育です。
柏
(鷗友学園女子)
アルカディア市ヶ谷7階「雲取」(2024年5月17日)
中学生は「なりたい自分」「夢」を見つける。高校生は「夢」を実現する進路を確実なものにする。生徒の意思を尊重しながら、あと一歩を踏み出せるよう背中を押すことが、学校の役目でしょう。多くの学校がキャリア教育として取り組んでいることは、ほぼフルコースで提供しています。卒業生による講演会、企業で働く方の出前授業、キャンパス見学、志望学部の特性に応じた学習プラン、総合型・学校選抜型ガイダンス、小論文・面談指導。保護者が参加するJJ(実践女子)ファーザーズがあり、実に多彩な職業をお持ちなので講話をお願いすることも。南極観測隊の経験をお持ちの方のエピソードは大変興味深いものでした。キャリア教育の情報は一元化してあり、自分の端末からアクセスできます。
湯浅
(実践女子学園)
スクールミッションが「志力を持って未来を創る女性の育成」ですから、学園生活のすべてがキャリア教育。自分の生き方を考える機会を豊富に用意しています。卒業生はよきロールモデルです。「輝く先輩に学ぶ」講演会、昨年は本田技研工業の技術者。就職後の出来事と心情のアップダウンをグラフで活写し、大喝采でした。中2生は、ボランティアで集まる卒業生をインタビュー。医師が手術室の見学、弁護士が裁判の傍聴を手配してくれたり、化粧品の開発者が研究室を見せてくれたり。仕事だけでなく生き方を語ってくださるので、同窓の絆は宝物。お付き合いが続き、就活の相談をする生徒もいます。インタビュー後はクラスで報告会を持ち、情報共有。自分たちだってできる!と元気を分かち合っています。
竹鼻
(豊島岡女子学園)
仏教に「無常」という言葉があります。世の中の事象や存在は常に移り変わるものという意味ですが、これはネガティブな意味ではなく、常に成長の可能性があると生徒には話しています。キャリア教育の第一歩として、自分を知るための「インパクト体験棚卸し」を行っています。これは今までで印象深かった出来事、例えば親子喧嘩、発表会の失敗、入院など、何か一つの体験をグルーブ内で語り共有するのです。どちらかといえばネガティブな体験を話す生徒が多いのですが、周りからは「よく乗り越えたね」「だから人の気持ちに寄り添えるのね」などと想定外に褒めてもらえます。客観的にみた自分の姿がわかり、自己肯定感を高める効果があります。進路を選択するときも、苦手だからダメ、ではなく自分なら努力すれば大丈夫、と前向きになれる。生徒は日々成長しています。
黒田
(淑徳与野)
キャリア教育を問われると、改めて女子校の存在意義を考えます。一番のポイントは、生徒自身の中にある自己制御、リミッターから解放すること。アンコンシャス・バイアスを持つ生徒は少なくありません。女子は理数系が苦手、リーダーに不向き、細かい気配りをなど。もし共学校に進学したら、何でも男子に譲り能力を発揮できない可能性もあります。本校で女らしさではなく自分らしさをみつけ、得意なことに挑戦してください。社会へ出たらPCスキルは必須ですから、全員数ⅡB、プログラミング、データサイエンスは必修。どんな仕事に就いても武器になります。適性を存分に伸ばせるよう設置した3つのコースで、クラスメートは志を同じくするライバル。本校では切磋琢磨して、納得いく未来へ巣立つことができます。
真下
(昭和女子大学附属 昭和)
受験生と保護者の方へ
応援のメッセージを
司会:高橋
Q5
これから中学受験も追い込みモードに入ります。あたたかい一言をお願いします。
まだ目には見えなくても、あなたの中にある可能性が開花する日を信じて、今を走りましょう。大人はそれをあたたかく応援する役を。
柏
(鷗友学園女子)
本校のパンフレットのテーマは「花を咲かせる」。夢をみつけて、一歩一歩、あなただけの花を咲かせる環境を、用意して待っています。
湯浅
(実践女子学園)
中学受験の目標は素敵な仲間と先生に出会うこと。第一志望が叶わなくとも、縁ある学校には必ず素敵な出会いがあるので、ご縁を大切に。
竹鼻
(豊島岡女子学園)
人生に無駄なことは一つもありません。親子二人三脚で、受験を楽しむぐらいの心の余裕をもちましょう。ご縁のある学校がベストの学校です。
黒田
(淑徳与野)
卒業生は、恵泉時代の自分が一番自分らしくいられたと言います。一人ひとりの居場所を大切にする学校です。一緒に、おおらかに学んでいきましょう。
本山
(恵泉女学園)
今やるべきことを精一杯やることが大事です。塾も大変ですが、小学校生活を一生懸命過ごしてください。中学受験はその延長線上にあります。
清水
(田園調布学園)
毎日100分の1ずつ成長すると半年で30倍。でも100分の1ずつ諦めたら小っちゃく縮んでしまう。自分を信じていきましょう。
真下
(昭和女子大学附属 昭和)
三輪田学園はあなたがあなたでいられる場。あなたがより高く、より遠くへはばたくための翼を鍛える場です。「さあ、ここから進め、私」
塩見
(三輪田学園)
各校の学園生活が目に浮かぶようで、とても参考になりました。本日はありがとうございました。
監修:森上
〒156-8551 東京都世田谷区宮坂1-5-30 TEL.03-3420-0136
学びの特色
1935年の創立以来、キリスト教精神を基盤に、心の教育をモットーとしています。校訓は「慈愛と誠実と創造」。互いを信頼し認め合いながら、日々探究心と向上心をもって授業に、部活に、学校行事にいそしんでいます。各教科とも知的好奇心を刺激する主体的な学びがキーポイント。英語は中1からすべてオールイングリッシュで行い、多文化を理解する礎です。校内の広い畑で、命を育てる喜びと出合う園芸の授業も、人気の的。
〒156-8520 東京都世田谷区船橋5-8-1 TEL.03-3303-2115
学びの特色
プロテスタント系キリスト教学校として1929年に創立しました。校訓は「神を畏れ 人を愛し いのちを育む」です。教育の柱は「聖書」、「国際」、「園芸」。授業では自ら考え、発信する力を身につける探究的学びに力点がおかれています。グローバル時代のツールとしての、英語教育は特に充実。海外研修や平和教育で実力を発揮します。また、創立以来制服はなく自由服。生徒はTPOを意識し、思い思いの装いで自分らしさを表現しています。
〒150-0011 東京都渋谷区東1-1-11 TEL. 03-3409-1771
学びの特色
校名の「実践」は、学問や教養を身につけるだけでなく、それを応用し活用するという意味が込められています。1899年創立の女子教育のパイオニア。2020年からオリジナル探究授業「未来デザイン」をスタートし、ユネスコスクールに認定されました。未知の課題に主体的に挑み、国際社会に貢献できる人材育成を目指します。日本文化を大切に受け継ぐ教育も特徴の一つ。礼法の授業で、周りの方に敬意をはらう、人としての“たしなみ”を学びます。
〒338-0001 埼玉県さいたま市中央区上落合5-19-18 TEL.048-840-1035
学びの特色
仏教に基づく情操教育を柱に1892年設立。利他=思いやりの心をもって国際社会に羽ばたける、多様な人材教育を目指します。中2の台湾研修と高2の米国修学旅行のほか、海外姉妹校での語学研修も豊富です。早稲田大学の高橋俊之先生によるリーダーシッププログラムも導入。互いの理解を深めて物事に取り組む「全員発揮のリーダーシップ」が、生徒のポテンシャルを高めます。剣道部のインターハイ出場もその成果の一つ。
〒154-8533 東京都世田谷区太子堂1-7-57 TEL. 03-3411-5123
学びの特色
教育目標は、自立して社会でリーダーシップを発揮できる女性の育成。1920年建学の伝統校です。生徒のキャリアデザイン構築のため、「本科コース」「グローバル留学コース」「スーパーサイエンスコース」を用意。進路にあった学習指導を丁寧に実施します。米国の昭和ボストンでの研修、キャンパス内のThe British School in Tokyo SHOWAへの短期留学、米国テンプル大学ジャパンでの体験授業など国際色も豊か。
〒158-8512 東京都世田谷区東玉川2-21-8 TEL.03-3727-6121
学びの特色
2026年に創立100周年、体験を重視した教育活動を展開しています。探究活動では連携している大学の施設を利用したり、外部の大会に挑戦したりするなど、外の世界へも積極的に踏み出していくよう後押しします。分野の垣根を越えた教科横断型授業も特色の一つ。音楽×数学、物理×情報など6年間で30種類程度の授業が行われています。教科と教科のつながりを体験することで、思考の幅が広がり、知的好奇心を刺激する授業となっています。
〒170-0013 東京都豊島区東池袋1-25-22 TEL. 03-3983-8261
学びの特色
1892年創立の女子裁縫専門学校がルーツ。教育方針は「道義実践・勤勉努力・一能専念」、毎朝5分間の運針を通して心を磨いています。「志力を持って未来を創る女性」の育成のため、探究活動とグローバル教育に積極的。中学から段階的に探究に取り組み、年2回課題探究の成果を発表する場を設ける。モノづくりを競うT-STEAMでは、筋電義手の開発・制御、羽ばたく生き物の模倣、自走ロボットなど高難度の課題に挑戦します。
〒102-0073 東京都千代田区九段北3-3-15 TEL.03-3263-7801
学びの特色
創立137年を迎えた伝統校。校訓は「誠のほかに道なし」。自分にも他人にも誠実であろうと努め、社会貢献を果たします。授業では生徒が意見を交わす「教え合い」「学び合い」の循環が肝心。学ぶ楽しさを知ることで、探究学習が深まっていきます。本校にはMGP(三輪田Miwada Girls’Project)があり、学校の広報活動に多くの生徒が加盟。自分らしくいられる、居心地のよい学校を、皆で作り上げる校風が自慢です。
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