2020年度から新しい学習指導要領が適用され、小学3年生から「外国語活動」、小学5年生から「外国語」が必修化されました。日本の英語教育は変わりつつありますが、世界113カ国・地域の約220万人の英語試験ビッグデータを活用した「EF EPI英語能力指数ランキング(2023年版)」で日本は87位。英語力が低い地域に該当しますが、現在の日本の英語教育にはどんな課題があるのでしょうか。
敬愛大学英語教育開発センター長、国際学部国際学科教授の向後秀明(こうご・ひであき)さん。22年間、高校の英語教育に従事、2017年から現職。小学校から大学まで、英語の指導と評価に関する研修を行っている
向後秀明教授(以下、向後):早期の英語教育導入により、一定の成果は出ていると思います。ただ、小・中・高の英語の授業時間をすべて足しても1000時間未満。英語圏で生活している人に比べれば、英語に触れる時間は決定的に不足しているといえるでしょう。また、入試合格が学習のゴールになっていたり、小学校で英語を専門に教えられる指導者数がまだ十分ではなかったりと、様々な課題があります。
諸岡なほ子(以下、諸岡):東アジア全体に、読み書きの能力は高いのに会話に苦手意識をもつ傾向はあるみたいですね。ただ、ほかのアジア諸国は経済的な発展とともに、英語力がどんどん上がっています。
向後:まずは英語に対するモチベーションが違いますね。いまやどの国・地域においても、経済的に成功しようと思えば英語力やグローバルな視点が必須です。これまでの日本は多くのことを国内で完結できた国だったので、英語力については結果的にこの10年で置いていかれた印象があります。英語学習は、本人のモチベーションを保つことが最も重要。さらに家庭での学習時間をどう活用するかによって、英語力に差がつきやすい状況にあると思います。
諸岡:私には小学4年生の息子がいます。親同士で情報交換をよくするのですが、教育熱心なご家庭では子ども自身が「将来海外に行って仕事をしたい」と話しているなど、意識の高さを感じます。
向後:目指すゴールはそれぞれ違っていいと思います。ただ、子どものレベルによって適切な教材を与えること自体が非常に重要で、それには大人のサポートが不可欠です。優先すべきは、楽しみながら“結果的に”学習できること。単語や構文を覚えることが目的になると苦行になってしまいますから。五感を活用して英語を自分の中に浸透させる意味では、自分の好きな洋楽を聴いてまねて歌う、海外のドラマを見る、英語を使ってゲームをするといった方法もおすすめです。特にゲームは主体的に自分でキャラクターやストーリーを動かせるので、英語力の向上につながりやすいと思います。
株式会社でらゲー ゲーム事業部の諸岡なほ子さん。海外経験や、子育て中の親目線も生かして「べティア」に携わっている
諸岡:学習意欲や集中力、記憶の定着率が向上するなど、最近はゲームの教育的効果に関する実証研究が進んでいます。ゲームの要素を取り入れて仕事や学習の効率をアップする「ゲーミフィケーション」により、気が進まないことでも楽しく取り組めるようになると言われていますね。
「ベティア ペラペラ英語アドベンチャー」は、キャラクターと英語で会話することでストーリーを進める体験型学習ゲームです。日本語訳がほとんど表示されないのは英語教材として珍しいと思いました。
向後:日本語訳がついていると、わかったような気がしてしまい、英語そのものの学習にはならないことが多いです。もちろん最初から完全に理解できるわけではなくとも、日本語に頼らずどうやって対応するか、この経験をしないと英語力は上がりません。
諸岡:同じ言語同士でも、6~7割の理解で互いに真意を推察しながら会話を進める場面は多くありますね。
向後:そうですね。外国語のほうが推測する幅が大きくなり、当然誤解も生じます。 日本人は真面目なので、相手と衝突したり自分の意図が伝わらなかったりすることに不安を覚えやすいですが、これは第二言語習得の大切なプロセスです。「意味を完全に理解していなくても会話を進める力」は非常に大事で、私はこれを「あいまいさへの耐性」と呼んでいます。
諸岡:ゲームだと相手が人じゃないので、失敗を恐れなくていいことは大きなメリットですね。外国語の学習方法のひとつに「イマージョン学習」があります。これはその言語が使われる環境に浸りきった状態で言葉の習得を目指す方法。例えば、留学やインターナショナルスクールに通うというのが代表的ですが、それをせずにイマージョン学習を実現できるのが「べティア」です。
向後:留学しても、日本へ戻ってきてまったく英語を使わなければ半年程度で元通りになってしまいます。異なる文化を体感する経験はたいへん貴重ですが、言語習得に限れば、必ずしも海外に行く必要はないでしょう。
諸岡:ベティアはリスニング、スピーキング、発音を総合的に高めるため、独自の音声認識エンジンを採用しています。アジアなど非英語圏の人が話す英語の発音も学習させております。日本人や韓国人の英語発音も高度に認識して採点をする点が、ほかのソフトと違うユニークなポイントですね。採点はなかなか厳しいですが、合格点を出すまでネイティブスピーカーのお手本音声を参考に、何度もトライすることができます。
向後:映像と音声による学習はゲームの大きなメリットですね。私は小学校から大学まで、全ての段階の英語教育に携わっていますが、発音がうまいと感じるのは小学生です。大人になると発音が苦手になるのは、成長に伴って母国語の知識が増えていき、脳内における支配率が大きくなることがひとつの要因だと考えます。その意味で、子どもたちには外国語を吸収する特異な才能があるといえますね。音声をたくさん聞いて、再生する能力をキープしてほしいと思います。
「べティア」は英語を話すことでストーリーを進めていくので、
単なる文例や単語ではなく、文脈で意味を理解することにもなるという。
加えてクイズやバトル、単語の並べ替えなどのさまざまな飽きない仕掛けがある
※Nintendo Switchのロゴ・Nintendo Switchは任天堂の商標です。
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「べティア」は、大学受験対策にも役立ちますか?
向後:学習指導要領が変わってから英語4技能(リスニング、リーディング、スピーキング、ライティング)の総合力が重視されるようになり、英検®やTOEFL®など英語外部検定で基準スコアを満たせば、高校入試や大学入試で加点対象になることがあります。また、大学入試の英語ライティングで、長文を要約したうえで自分の意見を書くなど、受信・発信の総合力を見る問題が増えています。こうした流れは今後も加速するでしょう。4技能は数カ月で身につくものではなく、幼いころから日常的に英語に触れることで基礎力が徐々についていくと思います。
諸岡:「べティア」は直接的な受験ノウハウを詰めた教材ではありません。しかし、英語に触れる時間を好きなだけ延ばすことができるのは、大きな利点だと思います。先生は以前、英語は強弱が大事だとおっしゃっていましたよね?
向後:単語レベルでも、文レベルでも英語には強弱があります。一方、日本語は強弱が少なく平坦な言語。だから、日本人が話す英語はネイティブに伝わりづらいのです。大人になると仕事でカタカナ英語を使う機会が増え、知らないうちに英語本来の発音から遠ざかってしまいがちです。だから、大人の学び直しとして、お子さんといっしょに「べティア」で遊ぶのもおすすめです。
2008年に千葉県教育庁教育振興部指導課指導主事、10年に文部科学省初等中等教育局教育課程課・国際教育課外国語教育推進室教科調査官を務めた向後教授。行政との深い関わりから、学習指導要領の改訂にも携わった
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子どもの英語学習に関して、親はどのように関わればよいでしょうか。
向後:よくある失敗例は、保護者がお子さんに発音やスペリングの間違いを教えようとすること。私の知る限り、うまくいった例はほとんどありません。それよりも「今日は何を勉強したの?」「そんなことができるようになったんだ」といった声がけをすることが大事です。
親子で楽しみながら英語学習、という使い方ができるのも「べティア」の特長と諸岡さん。苦手意識を持たず素直に英語に親しめるのではないかという
諸岡:全く同感です。私がベティアをプレーしていると子どもも一緒にやりたがるので、まず親が楽しむ姿勢を見せるのは大事だと思います。ただ、今ほど英語ができなかったときはお手本を聞いてもどうまねしていいかわからないし、私が教えようとするともっとイライラして投げ出してしまうこともありました。その反省を生かして、うまくできたときに「ママより発音うまいね」などと声をかけるようにしたら、子どもの積極的な姿勢や集中力が高まるのを感じました。
向後:英語に限った話ではありませんが、学習のペースは子どもによって違い、早ければいいとは限りません。個性を尊重し、他人との比較をしないことが大事ですね。
諸岡:英語学習のゴールは、どこに設定すればいいと思いますか?
向後:今の時代、たくさん情報があるので保護者も迷ってしまうでしょう。私は「こうすべき」とは考えていなくて、例えば国内外で活躍するアスリート、海外からの客に対応する店員、日常的にオフィスで英語を使う社員など、さまざまな職種や選択肢があることを子どもに見せるのがいいと思います。そして、「この選択肢を目指すにはこれくらいの英語力が必要!」と子どもに迫ってしまうのではなく、子ども自身が理解していく過程を見守ってあげてほしいですね。
諸岡:難しいですね。ついつい先回りしちゃう……。私たちは受験戦争をくぐり抜けてきた世代なので、子どもにも「同じような苦労が必要なのでは?」といった思考に陥りがちです。そうではなくて、もっと自由な選択肢があって、あなたに合った学び方はこれかもしれない、と提案できるといいですよね。
向後:労働人口が減少するなか、企業側も採用時に、どこの大学や高校を出たかではなく、より個人を深く見極める傾向にあります。入試対策としての英語学習ではなく、英語を使って自分の視野や可能性を大きく広げていく子どもが増えることを願っています。
諸岡:「べティア」は実際の会話で使われる表現を多く使用しています。親しみやすいイラストやポップな音楽、冒険物語などの相乗効果で、多くの子どもたちに「勉強は楽しい!」と実感してもらえたらうれしいです。