※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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ゴールデンウィークが終わり、張りつめていた緊張の糸が緩みがちになる5月。朝なかなか起きられなくなる子どもが急増するのがこの時期だが、無理やり学校に行かせようとすると逆効果の場合も。学童・思春期の子どもによくみられる「起立性調節障害(OD)」は、自律神経の機能障害が原因の病気だ。「怠けている」と誤解して不登校を招かないために、必要なことを児童精神科医に聞いた。

【図版】3つ以上あてはまると検査推奨 起立性調節障害のチェックリスト

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 朝なかなか起きられない、ふらつきやめまいがある、午前中は気分が優れず午後になると元気が出てくる、といった症状が表れる病気を「起立性調節障害(OD)」と呼ぶ。

 起立性調節障害は学童・思春期の子どもに多いと言われ、軽症例を含めるとその有病率は小学生で約5%、中学生で約10%。しかし、保護者から「仮病」「ただの怠けだ」と誤解された結果、治療にはつながらず不登校になる例も少なくない。

 精神科、心療内科、児童精神科のけいクリニック院長、山下圭一医師は起立性調節障害の主な原因について、自律神経の乱れを指摘する。

「自律神経は体の機能を活性化させる交感神経、リラックスさせる副交感神経の2種類の神経からなり、この二つの神経のバランスが保たれることで人間の体は正常に働きます。しかし、自律神経に問題が起きると、循環器系の調節がうまくいかなくなります。そのため、立ち上がったときに身体や脳への血流が低下し、めまいや立ちくらみ、動悸(どうき)などの症状が表れるのです」

精神科、心療内科、児童精神科のけいクリニック院長、山下圭一医師
精神科、心療内科、児童精神科のけいクリニック院長、山下圭一医師

 自律神経の乱れは季節や気候の変化、ストレス、生活リズムの乱れ、日常の活動力の低下などによって引き起こされるという。

ガイドラインでは、以下のうちいずれかの症状が三つ以上当てはまる場合、起立性調節障害の検査を実施することが推奨されている。

■春から夏は起立性調節障害に悩む子どもが急増する

 起立性調節障害は中学校入学以降、急激に増えると言われる。その理由は、肉体の成長に自律神経の成長がなかなか追いつかないからだ。さらに、山下医師は冬に比べて春から夏にかけて悪化しやすいと説明する。

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春から夏にかけて悪化しやすい理由は?