痛風は痛くて、歩くこともままならないといいます ※写真はイメージです(写真/Getty Images)
痛風は痛くて、歩くこともままならないといいます ※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 痛風はかつて中高年男性特有の病気でした。しかし発症年齢が若年化して、しかも増加しているという記事を配信したところ、20~30代の痛風経験者からも、たくさんの体験談をいただきました。痛風を取り巻く状況は大きく変わってきています。ところが、とくに病気や健康については、「これが効く」「あれは駄目」「そうらしい」といった話があちこちでささやかれ、なかには科学的根拠(エビデンス)がないもの、誤っているものも多くあります。そこで痛風を専門とする医師に聞いた「患者さんがよく誤解していること」、そして「正しい最新の情報」をお届けします。本企画は前編・後編の2部構成で、この記事は前編です。

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 そもそも痛風とは何なのでしょうか。相手を知ることが第一歩です。

 まず、血液中の「尿酸」の値が【基準値7.0mg/dL】を超える状態を「高尿酸血症」といいます。痛風という言葉はよく知られているようですが、高尿酸血症とその問題点については、まだあまり知られていないようです。

 高尿酸血症の状態では、尿酸は針のような形をした結晶になり、足の関節の周辺などに少しずつ蓄積していきます。この結晶は暴飲暴食や運動などのちょっとした刺激でもはがれることがあり、はがれた結晶は免疫細胞である白血球が異物だと認識して攻撃します。

 この時に白血球が出す炎症物質「サイトカイン」が、激しい痛みやはれを引き起こす原因です。私たちのからだを病原菌などから守る免疫システムが強固だからこそ、「風が吹くだけで痛い」などと言われるほどの強烈な痛みが起きるのです。

トゲトゲした針状の尿酸の結晶 提供:両国東口クリニック 大山博司医師
トゲトゲした針状の尿酸の結晶 提供:両国東口クリニック 大山博司医師

■痛風経験者=高尿酸血症患者

 この「発作」が痛風で、つまり痛風の人は「全員」高尿酸血症ということ。ただし、高尿酸血症でも「たまたま」痛風発作が起きていない人もいます。また、何度も発作を繰り返すと、患部の関節が変形してしまうこともあります。

 なお、尿酸とは肝臓で作られる代謝物の一つです。飲食物から作られるものもありますが、からだの細胞の新陳代謝などで、体内でもつくられます。両国東口クリニック理事長で痛風外来を担当する大山博司医師は、「痛風は尿酸と関係ないと誤解している人がまだいるようです。確かにかつて米国でそういう話が出たことがありますが、今は研究で因果関係が明らかになっています」と喚起します。

 まずは手始めにひとつの誤解を解消したところで、高尿酸血症と痛風でよく聞くうわさの真偽を問うていきましょう。

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専門家に取材して、11のうわさを検証