※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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尿酸値は高いけど、痛風の症状はないから大丈夫──。それは大いなる勘違いだ。高尿酸血症(尿酸値が高い状態)は「生活習慣病」で、放置すると命を脅かす恐れがある。誤解の多いこの「病気」の実態と最新事情を専門医に取材した。

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 痛風にどんなイメージを持っているだろうか。「風が吹くだけで痛む」「酒飲みの病気」「おいしいものばかり食べているからなる『ぜいたく病』」。これは正しい一面もあるが、誤解もある。

 なぜそんなに痛むのか。国立病院機構米子医療センター院長の久留一郎医師はこう解説する。

「肝臓で作られる代謝物の一つである『尿酸』の血液検査の値が7・0ミリグラム/dLを超えると『高尿酸血症』と診断されます。ただ、自覚症状がないので放置されがちです」

 高尿酸血症になると尿酸は結晶になり、血流に乗って全身を巡る。そして足の指の関節などに徐々に蓄積していくが、この時点では痛みはない。

「飲食物の影響や運動時などの足への刺激がきっかけで結晶がはがれ落ちると、白血球がそれを異物、敵とみなして攻撃するため炎症物質が出て、激痛が起きるのです」(久留医師)

 この「痛みの発作」が痛風だ。高尿酸血症の患者は痛風発作が起きる可能性があるが、必ずしも全員が経験するわけではない。痛みは治まっても、また発作を繰り返すこともある。

■食べすぎ、肥満は尿酸値を上げる

 近年、高尿酸血症の患者数は増え続け、さらに若年化も進んでいる。日本生活習慣病予防協会などの調査では、高尿酸血症の患者は1千万人超、30~40代男性の3割にのぼると推計。痛風患者は125万人で、49歳以下が30万人近くになるという。

「50年ほど前と比べると、初めて発症を経験する年齢が10歳程度若くなり、40代になっている」と久留医師は指摘する。

「食生活の欧米化や高カロリー摂取、運動不足などによるメタボリック症候群が若い人にも影響を及ぼしているからと考えられています」

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そもそもアルコール自体に尿酸値を上げる働き