夏も後半にさしかかると、暑さや湿気から身体にずっしりと疲れが溜まっていることが多いです。秋を爽やかに迎えるためにも、夏の疲れは早めに回復しておきたいですよね。こういった「なんとなく不調」の段階で、食事や生活習慣を見直しすることにより、悩みを解消できると理想的です。日本の漢方のルーツである中国伝統医学「中医学」は、一人一人の体質にあった養生法をもちいるのが特長です。本記事では、気になる症状から3つのタイプに分けて【夏の疲れからの回復法】を紹介します。
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■迎える秋冬に向けて身体を整える
五行学説に基づく中医学の考え方には、春夏秋冬の四季のほかに「長夏(ちょうか)」という季節があります。日本では8月下旬から9月中旬頃にあたる、夏と秋の間の季節です。
この時期に注意したいのは「脾胃(ひい)」(胃腸)の不調。湿気の多い日本の夏は、体内に「湿」(余分な水分や汚れ)が溜まりやすく、脾胃の機能も低下しがちになります。また、暑さから冷たいものを摂り過ぎて、脾胃を傷つけてしまうことも少なくありません。結果、お腹の不調や食欲不振などが続き、夏も後半に入るとすっかりバテてしまうのです。
夏から長夏にかけては、一年を通じて最も体力を消耗しやすい時期。まずは脾胃の働きを整えてしっかり栄養を摂り、秋冬に向けて十分な体力をつけることが大切です。
また、夏は「心(しん)」(心臓)に負担がかかりやすく、迎える秋は、乾燥から「肺」の不調が起こりやすくなります。夏の疲れを感じている人は自分の体調を見直して、心と肺の不調にも注意をしながら身体全体を整えるよう心がけましょう。
夏の疲れを引きずっていると、秋冬になってかぜやインフルエンザにもかかりやすくなってしまいます。早めの対処でしっかり回復し、食欲の秋、スポーツの秋を元気に楽しみたいものですね。
■チェック! あなたの夏疲れはどのタイプ?~症状別・長夏の養生~
夏の疲れの原因は、発汗による「気」(エネルギー)の流失、暑さによる睡眠不足、冷え体質や冷房による陽気不足、冷たいものの摂り過ぎによる脾胃の不調などさまざま。長夏の時期は、こうした不調が重なって知らず知らず身体に疲れが溜まっています。長く続いた不調は回復にも時間がかかるもの。秋に向けて、早めに対処するよう心がけましょう。
【タイプ1】動悸や息切れ、冷えが気になる「心の疲れ」タイプ
<気になる症状>
動悸・息切れ、胸苦しい、胸痛、手足のしびれ、不眠気味、身体の冷え、顔色が悪い、舌の色が暗い
<改善ポイント>
【「心」の気・血を守って血流を改善】
中医学には「血汗同源」(血と汗は同じ源)という言葉があり、大量の汗をかくと血の不足にもつながると考えます。また、汗をかくと体内の水分も不足してしまうため、血の潤いが失われてドロドロ血になってしまうことも。
こうした血の不足や血流の悪化が「心」の負担となってさまざまな不調を引き起こすため、夏は心の養生を心がけることが大切です。思い当たる症状がある人は、体内の気・血を十分に養い、血流を改善するよう心がけましょう。
<摂り入れたい食材>
心の気・血を補い、血行を良くする食材を:
百合根、蓮の実、小麦、鶏ハツ、ぶどう、らっきょう、玉ねぎ、紅花 など