通勤や子どもの送迎の足として順調に販売金額を伸ばしている電動アシスト自転車。しかし国外に目を向けると、中国や欧州では日本の電動アシスト自転車は普及していない。なぜなのか?マーケティングコンサルタントが読み解く。
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長い坂道を自転車で必死に立ち乗りでこいでいても、後ろから来た電動アシスト自転車に軽く追い越される――。体力の限界を感じた筆者は、電動アシスト自転車(以後、アシスト車)の購入を思い立った。しかしマーケッターの性(さが)で業界動向を調べてみると、意外な状況がわかって驚いた。
■アシスト車、販売台数と売り上げの比較
まず世界で初めてアシスト車が商品化されたのは、1993(平成5)年。ヤマハが販売したのが始まりだ。その後、30年近くの年月がたち、パナソニック、ヤマハ、ブリヂストンのトップメーカーが業界を先導している。
アシスト車の販売金額は毎年上昇している。内訳をみると、販売台数・金額ともに、アシスト車が軽快車(通常の自転車タイプ)、その他の自転車(マウンテンバイクやミニサイクル、子供車タイプ)を圧倒している。
2020年の販売台数は、アシスト車74万台、軽快車55万台、その他の自転車33万台。5年前からアシスト車は販売台数を50%も伸ばしている。販売金額ではアシスト車が618億円、軽快車94億円、その他の自転車59億円。アシスト車が売り上げ全体の80%を占め、ドル箱といえる状況だ。
販売単価は、経済産業省の資料によればアシスト車で平均8.4万円。付加価値に見合った高額商品として、自転車業界の売り上げにも貢献している。
■「電動アシスト自転車」と「電動自転車」の大きな違い
さて、冒頭に「電動アシスト自転車」とわざわざ“アシスト”を入れて表記したのは、「電動アシスト自転車」と「電動自転車」には大きな違いがあるからだ。
電動アシスト自転車とは、ペダルを踏み込んだ際の力をトルク・センサーが感知し、その力をモーターが補助してくれることで前に進む。ペダルを踏んでこぐ力1に対してアシスト力2まで、また速度は時速24kmまでと法律で決められており、それ以上のスピードにはアシストはしなくなるように設計されている。これは日本独自のレギュレーション・システムだ。このため、道路交通法上は、普通の自転車と同じ扱いになる。