DEEN通算35枚目のアルバム「シュプール」。ジャケットイラストを手掛けたのは、「レコスケくん」などの作家として知られる人気イラストレーター、本秀康。雪山を背景に、ノスタルジックで可愛らしい男の子と女の子が描かれたイラストは、冬のシティポップをイメージしたもの(写真:EPIC Records Japan提供)
DEEN通算35枚目のアルバム「シュプール」。ジャケットイラストを手掛けたのは、「レコスケくん」などの作家として知られる人気イラストレーター、本秀康。雪山を背景に、ノスタルジックで可愛らしい男の子と女の子が描かれたイラストは、冬のシティポップをイメージしたもの(写真:EPIC Records Japan提供)

●理想のDEEN像に苦しんだ過去

――ミリオンヒットの後も「瞳そらさないで」「未来のために」などのヒット曲が続きます。人気を保つ上で不安や葛藤などはありましたか?

 正直、不安はずっとありました。「いつ売れなくなるんだろう」とか、「来年はコンサートに人がこないんじゃないか」とか、マイナスなことをずっと考えていた時期もあります。自分たちの実力よりも、DEENが大きくなりすぎているのも感じていました。それに僕らはメディアにまったく出ていなかったので、ファンが思うDEEN像を壊しちゃいけないとか、かなり悩みました。「DEENのボーカルってスタンドマイクなのかな」とか、もうそういうレベルです。余計なことを考えてばかりで無理もしていた時期もありました。でも、同じレコード会社だったB’zやZARDなど、人気が突き抜けていた存在が近くにいてくれたので、それはすごいモチベーションになりました。「あんな存在になりたい」って、もうそれがエネルギーでした。

――音楽業界で人気を継続していくのは難しいという印象です。

 この世界、人気がずっと上昇していくこと、保つことも非常に難しい。あのCDが爆発的に売れる時代に、たまたま僕たちはうまくのっかることができた。売れることって奇跡ですから。時代背景、DoCoMoのタイアップのタイミング、プロデューサーとアーティストの関係性とか、すべての要素がうまく絡み合って偶然に生まれたもの。あの瞬間だからこそ生まれた奇跡だと思います。純粋に29年間も続けてこれたことを誇りに思います。それにDEENが活動を続けられているのは、それこそ90年代から応援してくれているファンのおかげ。ファンはもうアーティストの財産です。それだけでもう十分。これからもファンのために、そして自分たちのためにできるだけ長く歌を歌っていきたい。それができればもう最高です。

池森秀一(いけもり・しゅういち)/1969年12月20日生まれ。1993年にDEENのボーカルとしてシングル「このまま君だけを奪い去りたい」でデビュー。「瞳そらさないで」「未来のために」「ひとりじゃない」など数々のヒット曲で知られ、2021年12月には通算35枚目となるアルバム「シュプール」を発売。2023年にはデビュー30周年を迎える。「マツコの知らない世界」に「年間約360日蕎麦を食べ続ける男」として出演したことで話題となり、2020年には蕎麦に特化したYouTubeチャンネル「信州戸隠 池森そば 赤坂店」を開設、蕎麦料理研究家としても活動の幅を広げ続けている。

(聞き手・構成/AERA dot.編集部・岡本直也)