水柱・冨岡義勇(画像はコミックス『鬼滅の刃』5巻のカバーより)
水柱・冨岡義勇(画像はコミックス『鬼滅の刃』5巻のカバーより)

 19日に放送された『鬼滅の刃 特別編集版』の「那田蜘蛛山」で改めて注目されることになった、水柱・冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)。人気投票ランキングでは上位にランクインする人気キャラでありながら、「那田蜘蛛山編」でも明らかになったように、作中では“嫌われ者”としても描かれる。ほかの「柱」たちから厳しい目を向けられる場面もある。その理由は何なのか。2021年1月23日のAERA dot.の記事を再配信する。(以下の内容には、既刊のコミックスのネタバレが含まれます)

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■「かっこいい」冨岡義勇

 鬼の討伐部隊である「鬼殺隊」の中で、「最高位の剣士」とうたわれる「柱」・冨岡義勇。彼は、鬼と化してしまった竈門禰豆子と、その兄・炭治郎を命がけで守った人物でもある。彼の状況判断力、周囲からの信頼の厚さ、竈門兄妹に「救済への道」を切りひらいた行動力など、どの要素をとってみても、冨岡義勇には非の打ちどころがない。

 公式ファンブックには、作者の吾峠呼世晴氏みずからが、「目がしらをキュッと入れると、よりイケメンになります」と義勇の外見について注意書きをしている。外見、内面ともに、義勇というキャラクターは、その突出した「かっこよさ」で読者たちを惹きつける。

■冨岡義勇は「嫌われ者」?

 しかし、冨岡義勇にまつわる「周囲からの評判」には、「みんなからの嫌われ者」というエピソードがついて回る。たとえば、「下弦の鬼」と戦っている炭治郎らを救出する際には、一緒に行動した蟲柱・胡蝶しのぶ(こちょう・しのぶ)と義勇との間で、言い争いが起きている。

<そんなだから みんなに嫌われるんですよ>(胡蝶しのぶ/5巻・第43話「地獄へ」)

 義勇はしのぶに「俺は 嫌われていない」と反論するが、彼らの議論はこじれにこじれ、しのぶから「すみません 嫌われている自覚がなかったんですね」と一刀両断されてしまう。他の登場人物と比べると、義勇は表情を崩すことが少ないキャラクターだ。しかし、しのぶから一連の厳しいセリフを言われた際には、そのクールな美しさがそこなわれてしまうほどに、動揺が顔にあらわれる。外見も内面も完璧なはずの、義勇のどこが「嫌われ」てしまうのか。

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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柱たちから次々と叱られる義勇