数分で終わる演技に選手たちがすべてをかけて積んできた鍛錬が詰まっている新体操やアーティスティックスイミング (c)朝日新聞社
数分で終わる演技に選手たちがすべてをかけて積んできた鍛錬が詰まっている新体操やアーティスティックスイミング (c)朝日新聞社

 華やかな芸術スポーツの裏側には、地道で過酷な練習がある。他の選手と演技を同調させる必要のある新体操団体やアーティスティックスイミング(以下AS)のデュエット・チームでは、なおさら長時間の鍛錬が必要だ。

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 新体操団体の日本代表は、コロナ禍に見舞われた2020年からは難しくなったものの、それ以前は強豪ロシアから学ぶため、ロシアにも拠点をおき“武者修行”を行っていた。日本で行うものも合わせると合宿生活は年間約360日にもおよび、なおかつ1日の練習時間は9~10時間、オフは週1日だけという彼女たちの生活には、ストイックという言葉だけでは表し切れない厳しさがある。

 AS日本代表の華麗な演技の背後には、水中での激しい動きに耐え得る強い体を作る陸上トレーニングや、全員の動きがそろうまで妥協なく繰り返されるプールでの練習がある。AS日本代表は、通常では拠点とする東京・国立スポーツ科学センター(以下JISS)でルーティンを作り上げていくが、昨年4月に緊急事態宣言が発出された際にはJISSが使えなくなってしまった。所属クラブや拠点が異なる代表選手全員での練習が欠かせない競技だけにその影響は大きかったが、選手達は井村雅代ヘッドコーチが運転する車に乗り、泳ぐことができるプールに通って練習を続けた。6月に緊急事態宣言が解除されJISSが使えるようになると、AS専用プールでの特訓が再開され、昨年末から今年にかけて年越し合宿も行っている。

 東京五輪でASのデュエット・チーム両種目に出場した吉田萌は、多い時は1日に約10時間練習していたという。吉田は愛知県出身だが、デュエットを組む乾友紀子は井村ASクラブ(大阪)の選手だ。代表合宿以外の期間、吉田は大阪に借りたウイークリーマンションで生活し、井村コーチの下で練習を積んだ。また代表で練習している時も、午前と午後の練習以外に、午前5時半ごろから井村コーチの個別指導を受けていた。

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