今回のみずほ銀行、また東芝の「事件」の最大、且つ、世間から見えていない被害者は従業員でないかと思います。そのほとんどが、良い仕事を真面目に取り組み「一滴一滴の滴」として顧客や社会へ価値を提供する「大河」になる勤めに誇りを持っている方々です。皆さんも泣いている、もしくは激怒されているかもしれません。

 そんな皆さんに、渋沢栄一の言葉をお届けしたいと思います。

「従来の事業を後生大事に保守し、あるいは過失失敗をおそれて逡巡するごとき弱い気力では到底国運のあとへひく」

「余りに堅苦しく物事に拘泥し、細事に没頭するときは、自然にはつらつたる気力を銷磨してしまうのでこの点も深く注意しなければならない。」

「細心周知なる努力は必要であるが、一方、大胆なる気力を発揮して、細心大胆両者で、はつらつたる活動をなし、始めて大事業を完成しえるものであるから近来の傾向については大いに警戒しなければならぬ」

「また細事にこだわり、部局のことにのみ没頭する結果、法律規則の類を増発し、汲々としてその規定に触れまいとし、あるいはその規定内の事に満足し、あくせくしているようでは、とても進新の事業を経営し、はつらつたる生気を生じ、世界の大勢に駕することはおぼつかない」(出所:『論語と算盤』「細心にして大胆になれ」)

 システム障害が起こらないように細事を詰めることは、もちろんのことです。しかし、はつらつたる気力に障害がある組織が社会におけるパーパス(何故という問いに答える存在意義)があると言えるでしょうか。前例から学び、けれども前例に問われることない、進新の事業でなければパーパスを果たしていると言えるのでしょうか。

 そして、栄一は『青淵百話』という講演録で「会社銀行員の必要的資格」という考えも残しています。

第一 実直になること。

第二 勤勉精励なること。

第三 着実なること。

第四 活発になること。

第五 温良なること。

第六 規律を重んずること。

第七 耐忍力あること。

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『論語と算盤』のすゝめ