山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
交通規制も始まった国立競技場周辺(C)朝日新聞社
交通規制も始まった国立競技場周辺(C)朝日新聞社

 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「東京五輪開催への懸念」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

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 マスクを着用しながら歩くと、息苦しさを感じる季節になってきましたね。外来でも集団接種会場でも、額に汗をにじませながらも、マスクをしっかり着用されている人を見かけることが増えてきました。

 九州から東海では、例年より早い梅雨入りを迎えたようですが、関東は例年より1週間遅れての梅雨入りとなりました。真夏のような夏日の日もあれば、どんよりした雲が空を覆っている日が続いたりと、気温も湿度も変化が大きく、なかなか適応するのが難しい今日この頃です。

 さて、東京オリンピック・パラリンピック開催予定日まであと5週間となりました。東京五輪の中止を求める署名は35万人を超えており、競技会場や選手村などで活動する「大会ボランティア」の辞退者はおよそ1万人、交通や観光の案内をする「都市ボランティア」の辞退もおよそ3,500人と、ボランティアの辞退が相次いでいるといいます。

 6月初め、東京五輪のシティキャスト(都市ボランティア)の50代の女性が、麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)を接種しに外来にお越しになりました。感染症対策の一環として、東京五輪大会関係者に対して麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)の無料接種が実施されています。予定通りに東京五輪が開催されれば、ボランティアで案内をする予定だとお話されていました。新型コロナウイルスのワクチン接種について伺うと、「まだ接種に関する連絡はない。接種しないままオリンピックが始まってしまったら、心配です……」とおっしゃっていました。

 丸川五輪担当相は、東京五輪の大会ボランティア全員を対象にワクチン接種を検討していると述べてはいたものの、大会組織委員会によると、実際にはボランティア約7万人のうち、約5万人について新型コロナワクチン接種のめどが立っていないと言います。

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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