横綱と一緒に土俵に上がって三役揃い踏みをやったときは本当に興奮した。その後の取り組みは横綱の琴桜関だったけど、これはあっさり負けた。三役揃い踏みですっかり満足しちゃったんだ(笑)。平幕が出るのは結構珍しいケースだから、これもいまだに覚えているし、自分でもすごいと思っている(笑)。

 他の相撲取りの話になると、好き嫌いは別として白鵬はやっぱりすごいね。いろいろな記録を塗り替えているし、ここのところ休場が続いているけど、これまで40回以上も優勝している。これだけの力士は特筆すべきものだと思う。そんな白鵬でも勝率ではわずか1厘(りん)、大鵬さんに及ばないんだってね。あれだけ勝っている白鵬ですら一厘負けているんだからやっぱり大鵬さんもすごい。白鵬の現役を見られて、さらに間近で身の回りの世話をしながら大鵬さんを見られたのも俺の自慢だ。

 白鵬のことを「好き嫌いは別として」と言ったのは、白鵬が出るたびに俺は「負けろ!」と思っているからだ。俺は白鵬アンチ。なぜかというと、俺も同じ世界にいたから、あれだけ強くて懸賞金がいっぱいかかっている白鵬に勝てたら、当の力士はもちろん、その付け人も喜ぶだろうなと思うからだ(笑)。だから嫌いというより、判官びいきだね。白鵬の休場が続くと「負けろ」と思っている力士がいなくて寂しいよ(笑)。

 それと、これは若いときに聞いた話で定かではないけど、若浪関が蔵前国技館の鉄骨がむき出しになった天井を雲梯(うんてい)みたいに端から端まで渡ったと聞いたことがある。蔵前国技館はもともと、飛行機の格納庫を再利用して建てられたから、天井までの高さもかなりあるんだよ。

 あんな高さを手だけでぶら下がって渡るんだからすごいと思ったね。なんでそんなことをしたのかはわからないけどね(笑)。若浪関は小さいけどすごく足腰が強い力士でね。自分より大きい相手でもぐわーっと吊り上げる独特の取り口が印象的だったよ。

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阿修羅とプロレスを盛り返したことは自信を持っている