■イメージの参考にしたのは80年代

 二人が写真集のイメージを具体的にする過程で参考にしたのは、アダルト系の老舗出版社・三和出版が80年代に出版していたエロ本の数々だった。

「三和出版が創業したのは昭和51(1976)年で、エロ系出版社としては後発。そのため、創刊当初からマニア的というか、角度を変えたエロに注力していたところがあります。今も続いている『マニア倶楽部』を筆頭に、ひねりを加えながらいろんなものを出していました。でもそれは売るためだけじゃなくて、編集者が本当に好きで作っている圧倒的な熱量があるんです」(松村さん)

「私の中での三和出版のイメージは、『仕事を受けたくない出版社』(笑)。マニアっぽさや写真の汚さ、あられもないエロさに女性としては引いてしまう。もし同じエロでも、『デラべっぴん』などを出していた英知出版だったらまだそこまでの拒否反応はなかったかも。でも、逆に言えば、三和にはそれだけ強烈なイメージが確立されていたとも言えるんですよね」(マキエさん)

 松村さんによると、三和出版系のエロ雑誌にはいくつかの特徴があるという。

「『デラべっぴん』にA級のモデルさんが出ているとすれば、三和系は失礼ながら素人っぽいモデルさん。だから、顔や全身ではなく、おっぱいやパンチラ、お尻のアップの写真ばかりを並べてみたり、写真をよりエロく増幅させるために、劣情をかきたてるような文章をみっちりつけたりと、随所に工夫が凝らされていました」(松村さん)

マキエマキ 2nd 似非』でも、ワキやお尻のアップばかりを集めたページや、マキエさんの写真とともに「離島食いつくし欲情伝説 ―マキエの手ほどき、純情筆おろし」といった官能小説のようなタイトルと文章が添えられたコーナーなどがあり、写真集全体から三和らしさがにじみ出ている。文章の半分以上はマキエさん本人が書いたという。

 松村さんは編集するにあたって、マキエさんに「パンチラ写真」の撮り下ろしをリクエストした。

「過去の作品を見ていてパンチラ写真がないのに気づきました。パンチラ写真の有無でエロさが全然違ってくるので、三和系の雑誌を踏襲するのであればパンチラ写真は必須でした」(松村さん)

 一方のマキエさんは、今まで自撮りをする時に下着姿の時を除いて、わざわざパンツを脱いで撮影していたため、松村さんの提案に驚いたという。

「2017年くらいに開催した個展でパンツを穿いた状態の作品を出した時に、元『デラべっぴん』の編集長さんがその写真を見て、『あなた、このパンツわざと穿いてるの? パンツ穿いてるとがっかりするから穿いてない方がいいんだよ』と言われたんです。だから私はパンツを脱いで撮影するようにしたんですけど、松村さんと真逆だったんですよね」(マキエさん)

「パンツ1枚が、エロ系の中ではメジャーだった英知出版と淫心をかき乱すマニア通な三和出版の違いということなんですよ! その生っぽさが!!」(松村さん)

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