児童数の少ない公立小学校に、学区外からも通学できる「特認校制度」。多くの自治体が子どもの確保に苦戦していることを理由に導入するが、東京都中央区には、定員の13.7倍もの入学希望者が殺到する特認校がある。東京駅前に建設中の高層ビルに設置される予定の「中央区立城東小学校」だ。人気が集中する背景には、何があるのか。

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 東京駅八重洲南口前。重機の音がとどろく一角に、地上45階地下4階建て、ガラス張りの超高層ビルが姿を現しつつある。三井不動産が中心となって進める再開発事業の一環で、完成予定は2022年8月。オフィスや商業施設、バスターミナルのほか、上層階には日本初進出となるラグジュアリーブランドの「ブルガリ ホテル 東京」が開業する。この複合ビルの1~4階部分に校舎を構えることになるのが、もともと同じ敷地にあった区立城東小学校(現在は仮校舎に移転中)である。

「マスコミの一部に『ブルガリ小学校』と揶揄する声もありますが、ブランドとは一切関係ありません」とは、中央区の担当者。

 城東小の学区である八重洲・京橋地区は、オフィス街ゆえに子どもが少ない。駅前開発の波に押されて、同小の全校児童数は少なくなり、2008年には50人にまで減った。明治期からの歴史ある小学校が存続の危機にさらされる一方で、湾岸部の月島・勝どき地区では、タワーマンションの建設ラッシュで子育て世代が急増し、小学校が手狭に。区内でアンバランスが生じていた。

 そこで区は2009年、学校を存続させ、子どもの数の格差を解消する方策として、学校選択制を導入。城東小をはじめ、児童が減っている6校(現在は5校)を「特認校」として、区内のどこからでも通えるようにし、一部の特認校においては湾岸部から無料のスクールバスも走らせた。その結果、城東小の児童数は増加に転じ、2015年には100人以上に。再開発ビルへの入居を2年後に控えた今年度は、新一年生の受け入れ枠12人に対し、164人もの申し込みがあったのだ。

 新校舎の延べ床面積は、旧校舎の約1.7倍となる約7600平方メートル。今後は各学年1学級から2学級に増えるという。

「雨天時も子どもたちが体を動かせるように、校庭となる屋上に開閉式屋根を取り付けました。オフィス街ながらも教育環境を整えています」(区の担当者)

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曽根牧子
編集者/ライター 曽根牧子

朝日新聞出版アエラムックチームの編集・ライター。『AERA English』『英語に強くなる小学校選び』などで教育、英語学習、小学校受験に関する記事を執筆。

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