あばれる君(C)朝日新聞社
あばれる君(C)朝日新聞社

 特にこれといった冠番組や代表作、またはお笑いコンクールの覇者でもないのに、なぜか仕事が途切れないという芸人がいる。その代表格があばれる君(34)だ。

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 2008年、駒澤大学在学時にお笑いアマチュア選手権大会で特別賞を受賞すると、ワタナベコメディスクールに特待生として入学。卒業と同時にワタナベエンターテインメントに所属し、芸人としての道を歩むようになった。以後、これといった代表作もない彼が10年にわたってテレビに出続けられているのはなぜか。放送作家は次のように語る。

「最近では彼が得意とするピンネタをあまり披露できていませんが、もともとは“熱血ひとり芝居”という暑苦しい男が空回りするひとりコントをやり続けていて、業界内ではそこそこ評価が高かった。いざテレビでチャンスをつかむと、ピン芸の空回りキャラを大御所MC芸人たちがこぞって面白がり、ブレイクしたのです。たしかにこれといった代表作がないのはその通りですが、非常にクレバーな芸人さんという印象です。自分の立ち位置をよくわかったうえで、いつも全力でやる。わかりやすく大汗をかいてくれるのも、制作サイド的には起用しやすい。子どもやご年配の視聴者にも好感を持ってもらえるビジュアルなので、幅広い世代にリーチできるのも彼の強みです」

 最近では「アイ・アム・冒険少年」(TBS系)での活躍がめざましい。無人島でさまざまなアイテムを駆使して脱出を試みる企画「脱出島」では持ち前のガッツを発揮して大活躍。“脱出島の絶対王者”とまで言われるようになった。一方、トーク番組では相変わらず空回りをすることで笑いにつなげ、タレント性の高い芸人と言えよう。

 昨今のあばれる君人気は「お笑い第七世代の追い風によるところも大きい」というのは、民放バラエティ番組ディレクターだ。

「第七世代が大ブームとなるなか、主要なメンバーのスケジュールは取るのが難しい。あばれる君は2010年初頭から徐々にテレビに出ていたので決してその世代ではないですが、雰囲気は意外と似ている。鋭いトークで笑わすわけでもなく、過酷なロケではガッツを見せ、人をいじって笑いを獲ったりもしない。ある意味“優しい笑い”というか、そこが“突っ込まない漫才”で人気を獲得したぺこぱにも通じるところがある。第七世代がブッキングできなかった場合、ひとつ上の世代のあばれる君にお鉢が回ってくることが結構あるんです。トーク番組では全員から突っ込まれ、大汗をかきながら受け身で笑いを獲ってきた印象でしたが、ここにきてやっと時代にマッチし始めたと思います」

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藤原三星

藤原三星

ドラマ評論家・芸能ウェブライター。エンタメ業界に潜伏し、独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を書き続ける。『NEWSポストセブン』『Business Journal』などでも執筆中。

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