毒親に金を無心される子どもは少なくない。写真はイメージ(写真/PIXTA)
毒親に金を無心される子どもは少なくない。写真はイメージ(写真/PIXTA)
山下さんが父親にお金を振り込む際に送ったLINEのメッセージ(本人提供)
山下さんが父親にお金を振り込む際に送ったLINEのメッセージ(本人提供)

「幼いころは、自慢の父だったんです。でもいつからか、私に金をせびるようになってきて……。そんな父がいると知られたら彼女にもフラれるんじゃないかと不安で仕方ありません」

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 都内の物流倉庫に勤務する山下浩さん(仮名・45歳)は、実父(80)からの度重なる金の無心に頭を抱えている。

 山下さんの両親は栃木県で不動産関連の会社を経営している。40年以上続く地元企業ながら、資金繰りはかなり厳しいようで「何度倒産しかけたかわからない」(山下さん)という状態が続いている。

 だが、羽振りがよかった時期もある。バリっとスーツを着こなし、高級車を乗り回す父親の姿はとてもかっこよかったことを覚えている。

 仕事一筋だった父親と接するのは月2回程度の外食。寂しさを感じたこともあったそうだが、母親からは「我慢しなさい」と言われ続けてきたという。母親も一緒に仕事をしていたため、年の離れた兄と2人で留守番をすることも多く、机の上に置かれた千円札が“食費”だった。

「冷蔵庫の中には昨晩の残り物が入っているので、それを食べて、金を浮かせました。それを駄菓子やゲーム代に充てていましたね」

 家族が経済的に困ることはなかったが、その裏で、事業はあまりうまくいっていない様子だったという。高値で売れるはずの物件が売れなかったり、仲間と協力して進めるはずの事業が白紙になったりと、思い通りにならないことが多かったようだ。資金繰りのために銀行に必死に電話をかける母親の姿は今でも忘れられないと、山下さんは振り返る。そういう姿を見ていると、両親の仕事を継ぎたいとは思わなくなったという。

 高校卒業後、地元の工場に就職した山下さんは、20歳の時に上京を決意する。その背景には、父親への嫌悪感があったようだ。

「父が取引先の女性と不倫していて、それが母にバレたんです。毎日のように夜中までケンカが続きました。昔はかっこよかった父のだらしない私生活を知ったら、すごく気持ち悪く思えてきました」

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コツコツためた500万円が“アダ”に