5.語弊(ごへい)
~「弊」は、布を手で引き裂いてボロボロにするさまを表す

 「語弊があるかもしれませんが」のように、言いづらいことを言うときの前置きなどとして用いられる言葉です。「間違っているかもしれない」という予防線をはる意味もあります。「弊」は、布を手で引き裂いてボロボロにすることを表し、「語弊」は古びて使い物にならないような言い方を意味します。そこから、「誤解をまねきやすい言い方」などの意味になりました。

6.鞭撻(べんたつ)
~「ご鞭撻ください」は「鞭で打ってください」!?

 もともとの意味は、「鞭で打つこと」です。「鞭」は「むち」のことで、右側の「便」は「人にむちを打つ」様子が元になっていて、左側には素材となる「革」が加えられています。「撻」は手偏に「達」で、手を加えて到達させることを表します。したがって「ご鞭撻ください」は、「鞭で打ってください」という意味ではなく、「いましめはげましてください」という意味になるのです。

7.僭越(せんえつ)
~他人の領分に入り込み度を越すことが元の意味

 祝いの席などで、「僭越ながら、ごあいさつさせていただきます」のように使われます。「本当は自分にはふさわしくないけれど」という謙遜の思いを伝える言葉です。「僭」は「他人の領分に入り込んでものを言うこと」を表し、「越」は「度を越して遠くに至ること」を表します。合わせて、「差し出がましいこと」を意味するのです。

※漢字エンタメ誌『みんなの漢字』2020年1月号から抜粋
監修/久保裕之(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所)