新型コロナ感染症に合併する発疹は、もう一報あります。タイからの報告(「J Am Acad Dermatol. 」2020 Mar 22. pii: S0190-9622(20)30454-0. doi: 10.1016/j.jaad.2020.03.036.)によると、新型コロナ感染症の患者さんにはデング熱と同じような皮膚症状が出たとのことでした。デング熱は赤いぶつぶつに小さな内出血が交じる典型的な皮膚症状が出現します。タイではデング熱が多いため、患者さんの初診の段階では新型コロナ感染症とはわからず誤診したとのことでした。

 どの国でも新型コロナ感染症患者は隔離され、皮膚症状が丁寧に解析されていない印象です。

 しかし、上記二つの論文から言えることは、新型コロナ感染症で出現する皮膚症状に特徴的なものはまだ見つかっていないということです。体全体が赤くなったり、じんましんが出現したりなどの症状は、新型コロナ感染症だけでなく他のウイルス感染症でも私たち皮膚科医が目にする症状です。

 こういった皮膚症状について報告が出ると皮膚のぶつぶつが心配になる人も多いと思います。

 気をつけてもらいたいのは、熱が出て皮膚にぶつぶつが出現したからといって、それが新型コロナ感染症の症状というわけではないことです。前述のように、他のウイルス感染でも同様の皮膚症状は出現しますし、薬の副作用(いわゆる薬疹)でも同じ症状が出ます。

 はしか(麻疹)もウイルス感染症の一つですが、発熱後すぐに口の中に白いぶつぶつができます。これはコプリック斑とよばれ、はしか特有の症状として診断の助けになります。

 また、リンゴほっぺ病(伝染性紅斑)はヒトパルボウイルスB19というウイルス感染症ですが、病名のとおり両頬がリンゴのように赤くなります。また、手足にレース状の発疹が出ることも特徴的です。

 今後、新型コロナ感染症で特徴的な発疹(ぶつぶつ)が見つかると、診断の助けになるかもしれません。このコラムでは引き続き、最新の論文を紹介していきたいと思います。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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