大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員を経て2017年より京都大学医学部特定准教授。皮膚科専門医
※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 新型コロナウイルスの感染が世界中に広まるなか、患者のデータを報告する論文が世界各国から出てきています。論文によると、一部の患者に発疹が出ることがわかってきたといいます。京都大学医学部特定准教授で皮膚科医の大塚篤司医師が解説します。

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 新型コロナウイルス感染症が日本でも猛威を奮っています。首相の緊急事態宣言やタレントの志村けんさんが亡くなったことで、これまで経験したことのない恐怖を多くの人が感じています。

 医療崩壊が起きているイタリアでは、皮膚科医も新型コロナ感染症の診療に駆り出されています。感染症専門医だけでは対応ができないため、皮膚科医は緊急度に従って診察の優先順位を決めるトリアージを担当し、新型コロナ感染症患者の最前線で活動しています。

 さて、最近になって新型コロナ感染症では一部の患者さんに発疹(ぶつぶつ)が出ることがわかってきました。

 イタリアの新型コロナ感染症病棟からのデータをまとめた報告(「J Eur Acad Dermatol Venereol. 」2020 Mar 26. doi: 10.1111/jdv.16387.)では、88人の患者のうち18人(20.4%)に何らかの皮膚症状が見られました。この発疹の出現時期ですが、18人のうち8人の患者さんは発症とともに、残りの10人は入院後に皮膚症状が出たと論文では記載されています。

 では、どういった皮膚症状が出たかと言えば、残念ながら皮膚のぶつぶつの写真はなく、論文では記載のみです。これは、皮膚症状を記録に収めるためのカメラが、感染拡大防止の観点から病棟に持ち込めなかったためであるようです。

 この論文では、18人中の14人が紅斑性皮疹(あかいぶつぶつ)、3人が広い範囲でのじんましん症状、1人が水ぼうそうのような症状だったとあります。

 出現部位は体幹で、かゆみはほとんどないとのこと。これらのぶつぶつは数日で消失したようです。また、これら皮膚症状は、新型コロナ感染症の重症度とは関連しないとのこと。つまり重症だからといってぶつぶつが出るわけではないようです。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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