このように分けられてはいるものの、実際には「さまざまな要因が関係する『混合型』の痛みが多い」と、千葉大学病院痛みセンター・センター長の大鳥精司医師は言います。

「ひざが痛いけど腰も痛いなど、侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛が混ざり合っていたり、それに心因性疼痛が重なったりすることが多いため、痛みの原因や種類を明確に分類することは困難です」

 腰痛については、以前は85%は原因を明確に特定できない「非特異的腰痛」とされていました。しかし、近年では多くの腰痛の原因がわかりつつあります。ひと言で「痛み」といっても、原因によって治療法は異なるため、「痛みがあったらがまんせず、早めに一度整形外科を受診して」と愛知医科大学病院学際的痛みセンター長の牛田享宏医師は話します。

■痛みがゼロにならなくてもうまく付き合っていく

「整形外科では、まずは痛みの原因を探すために診察や検査をおこない、大きな異常や病気がないか調べます。運動器の痛みであれば、関節が傷んでいるか、炎症はあるか、神経が伝わっているかなどを調べ、ここを治せば改善するという方法がある場合には治療をおこないます。加齢などにより完治が難しい場合は、少しでも痛みが楽になる方法を一緒に考えていくことになります」

 運動器の痛みについては、原因が明確なものは治療しやすい傾向があります。原因がわからないもの、手術をしても完全に痛みがなくならないものへの対処こそ、難しいと考えられます。

「痛みを完全になくそうとすることより、痛みとうまく付き合いつつ、動けるからだやQOL(生活の質)の維持を目指すことが大切です」(大鳥医師)

「痛みとうまく付き合うには、加齢による痛みを受け入れ、理解することが必要です。例えば、目にまつげが一本入ってもすごく痛いように、深刻な原因がなくても痛みは人を苦しめます。腰や足が痛ければ、『動けなくなるのでは』と不安にもなります。知識を持つことで安心でき、痛みと向き合えるようになることもあるでしょう」(牛田医師)

(文・出村真理子)

○監修
千葉大学大学院医学研究院整形外科学教授
千葉大学病院痛みセンター・センター長
大鳥精司医師

愛知医科大学医学部教授
愛知医科大学病院学際的痛みセンター長
牛田享宏医師

※週刊朝日ムック『首腰ひざのいい病院2020』から