「腰痛の原因」
「腰痛の原因」

 加齢により増える、首や腰、ひざなどの痛み。痛みにはいくつかの種類があり、原因やメカニズムによって分けられます。腰痛については、以前は85%は原因を明確に特定できない「非特異的腰痛」とされていました。しかし、近年では多くの腰痛の原因がわかりつつあるといいます。好評発売中の週刊朝日ムック『首腰ひざのいい病院2020』では、千葉大学病院痛みセンター・センター長の大鳥精司医師と愛知医科大学病院学際的痛みセンター長の牛田享宏医師に取材しました。

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 私たちは日々、さまざまな痛みとともに生きています。そのなかで、加齢とともに増えていくのが腰や股関節、ひざなど「運動器」の痛みです。運動器とは、骨や関節、筋肉など、からだを動かすための部位のこと。加齢により、関節の軟骨がすり減る、背骨が変形する、骨がもろくなるなど、からだを使い続けることによる負担が蓄積され、運動器の痛みが生じるのは自然なことといえます。

 痛みにはいくつかの種類があり、原因やメカニズムによって「侵害受容性疼痛」「神経障害性疼痛」「心因性疼痛」に大別されます。

 侵害受容性疼痛とは、からだが傷ついたときに細胞から痛みを起こす物質が出て、からだが傷ついたことを察知する部分(侵害受容器)を刺激することで起こる痛み。打撲や切り傷、骨折などの痛みが該当し、運動器の病気では、急性腰痛症(ぎっくり腰)や肩関節周囲炎(五十肩)などが挙げられます。

 神経障害性疼痛とは、何らかの原因で神経の障害が起こり、その異常な働きにより起こる痛みのこと。痛みを抑える神経の働きが悪くなることや、神経が過敏になることでも起こります。運動器の病気では、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などによる痛みやしびれが該当します。

 心因性疼痛とは、不安やストレス、精神科領域の病気などによって起こる痛みをいいます。侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛にあてはまらない痛み、原因がわからない痛みは心因性疼痛と分類されます。

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さまざまな要因が関係する「混合型」の痛み