だが、志望園を選ぼうにも、身近に卒園生がいない限り、園の雰囲気や内情を知ることは難しい。そこで、ほとんどの親が頼るのが、受験専用の幼児教室だ。

 岡本さんが最初に足を運んだのは、受験の1年前、娘が2歳のとき。最初は週1回、直前は週2、3回通った。

「関係者以外でも入れる園の行事を教えてくれるなど、お教室の価値は、個人では知り得ない情報を持っている点にあります。合否を左右する願書も添削してくれました」

 支出総額は、直前の面接対策も含め、約100万円だったそうだ。「小学校受験と比べたら、かなり安いと思いますよ」

 小学校受験では「1年間で200万円以上費やした」と、記者も友人のママから聞いたことがある。だが、幼児教室の授業が一回90分約1万円、仮に1年間週2回通うと約100万円。やはり家計への負担は小さくない。

■受験対策が日常の子育てに浸透

 入園試験では、数や色を理解しているかなど、月齢に応じた知力を多少はみられるものの、集団での自由遊びや親子遊びを通して、「丁寧に育てられているか」が最も重視されるという。あいさつや片付けができるか、脱いだ靴をきちんとそろえることができるか、などをみる園もある。

 岡本さんは、受験を決めてからは仕事量を抑え、娘と塗り絵をしたり、動物園に行ったりする時間を増やした。面接で台所用品の名前や用途を聞かれることも多い。毎日夕食をつくるところを娘に見せて手伝わせた。受験対策が、日常の子育てに浸透していった。

「大切にしたのは、子どもとの基本的信頼関係を築くこと。ママとラブラブで過ごし、信頼関係ができると、折り紙をきれいに折るとか、食器を運ぶとか、多少の負荷をかけても言うことを聞いてくれるようになります。どうすれば子どものやる気を引き出せるかトライ&エラーを重ね、試験が日常の延長になるように親が調整することが大切です」

 それまで夜に会議を入れるなど、ワーカホリックだった岡本さんだが、「合格できなくても、1年間娘と向き合えてよかった」とまで思えるほど、親子で濃密な時間が過ごせたという。その結果、見事、第1志望の2年保育の難関幼稚園に合格した。

「ぜひ受験準備の過程で、わが子の適性を見抜いてください。向いている園の対策なら、親子にとってかけがえのない時間になるはずです」

 とはいえ、入園の壁は高い。今回、難関幼稚園に合格したほかのママたちにも話を聞いた。そのなかで聞こえてきたのが、「保育園児(=働く母親)は不利」との声だ。確かに、多くの有名幼稚園が、説明会や願書配布、受験日を平日の昼間に設けており、共働き家庭にはハードルが高い。受験日から逆算して第2子を妊娠し、育休中に上の子どもの入園対策に励む「戦略的ワーママ」もいるほどだ。 

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