だが、ある大手幼児教室の関係者は、「昔ほど『保育園児NG』の風潮はありません。エスカレーター式の幼稚園の場合、少子化のなか、門戸を広げて優秀な子どもを低年齢のうちから確保したいという思惑がある」と話す。

 そもそも幼稚園の中には、関係者以外の合格枠がわずか10人程度という園があったり、人気の国立大付属園の倍率が15倍以上だったりと非常に狭き門だ。幼児教室「キッズエデュ」を主宰する高橋記代子さんは、親の心構えをこう説いた。

「不合格でも親子が否定されたわけではありません。ご縁があった環境で楽しく過ごすことが大切です。入園してみて、ご家庭の教育方針と合わず、『こんなはずじゃなかった』というのもだめ。親の心は子どもに伝わり、幼稚園に行きたくなくなります。また、お母さまだけが熱心なケースが多いので、お父さまともよく話し合ってください」

■保護者たちに聞く「本音」

 最後に、東京23区内の有名幼稚園に通う(または過去に通った)子を持つ保護者5人に、「お受験」にまつわる本音を聞いてみた。以下に紹介する。

▽幼稚園受験のメリットは?
・中学・高校受験がないので勉強以外のスポーツや趣味、留学に打ち込める(私立女児)
・子どもが合否を自覚しにくい(複数回答)
・幼少期からのほうが学校の教育方針に色濃く染まることができる(私立女児)

▽デメリットは?
・似たような家庭ばかりで多様性にはほど遠い環境(私立女児)
・満員電車での通園が大変(全員回答)
・地元の友達が少ない(全員回答)
・お迎え時間が早すぎる(全員回答)

▽準備期間と費用は?
・1年間、幼児教室に週2、3回。150万円(私立女児)
・5カ月、幼児教室に週1回。30万円(私立女児)
・受験料のみ。面接服も手持ちのもの(国立男児)

▽入園後の生活は?
・同じ価値観の家庭が多く、母子ともにストレスがなく快適(複数回答)
・抽選のはずなのに、クラスの半数が医師や弁護士の家庭で驚いた(国立女児)
・小学校に上がると、中学受験の必要がない環境にもかかわらず、結局みんな塾通いだった(国立女児)

▽合格の決め手は?
・「世の中は自分の思い通りにならないのが当たり前」と教え育てたので、面接の長い待ち時間もきちっと待てた(私立女児)
・初めての場所でも物おじしない性格だった(国立男児)
・親子遊びのとき、子どもに手を貸しすぎず、適切な言葉がけができた(国立女児)

▽ここだけの話、聞かせてください
・同じクラスの世帯平均年収は2500~3000万円と感じる(私立女児)
・願書の備考欄には「親の学歴や職業」「親族に卒園生がいるか」などを書くのが定石(複数回答)

(文=AERAムック編集部・曽根牧子)

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曽根牧子
編集者/ライター 曽根牧子

朝日新聞出版アエラムックチームの編集・ライター。『AERA English』『英語に強くなる小学校選び』などで教育、英語学習、小学校受験に関する記事を執筆。

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