こうした重症化の予防やインフルエンザの発症リスクを下げるため、さらには周囲への感染拡大を防ぐためには、日々のこまめな手洗いうがいの他、インフルエンザワクチン の予防接種が欠かせません。

 日本では毎年冬から春にかけて流行するインフルエンザですが、世界的にもインフルエンザウイルスは湿度が低いほど生存率が高いと長らく考えられていました。しかしながら、アメリカ国立衛生研究所のBloom-Feshbach氏らが世界の137カ所の検査室で確認されたインフルエンザの季節的・地理的変動を確認したところ、温暖な地域では冬季に一貫してピークに達しましたが、東南アジアの熱帯地域では半年ごとに頻繁に発生していること、さらにいくつかの温帯地域では、冬と夏にインフルエンザのピークがあったことが分かったと2013年に報告されました。

 実際、今年の沖縄でのインフルエンザ注意報の発令からもお分かりの通り、日本でも、東南アジアと同様に亜熱帯に属している沖縄では、夏にもインフルエンザが流行しています。

 さらに、2018年7月、ペンシルベニア州のピッツバーグ大学のKormuth氏らの調査によって、高湿度の環境下でもインフルエンザウイルスの感染力は弱まらない可能性のあることが示唆されたと発表されました。

 インフルエンザ流行期には、少なくとも一般的な住宅では、室内の空気が外気と入れ替わる1時間のうちは咳などで飛散した気道の分泌物がウイルスを保護している可能性が考えられるため、インフルエンザの流行期には自宅や職場の空気をこまめに入れ替えたり空気清浄機を活用したり、ドアノブやキーボード、電話、机などを定期的に消毒するといいと言います。

 しかしながら、今年の冬に限らず、旅行や海外出張の際にもインフルエンザ感染には注意が必要です。例えば、オーストラリアなど南半球の温帯地域では、インフルエンザは4~9月にかけて流行がピークを迎えます。他にも、バス旅行やクルージングといった団体旅行や集団渡航の場合や、熱帯地域への渡航の際にも、インフルエンザの感染リスクは高まります。渡航先の季節やインフルエンザの流行状況を事前に確認することが大切なのです。

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